日米欧を含む41カ国は,特許の認定基準を統一する新しい条約を作ることで大筋合意した。この41カ国と欧州委員会,欧州特許庁(EPO)は,2006年9月24日にジュネーブで日本が主催した会合において,今回の合意に達した。2006年11月には東京で新たに会合を開き,新条約の条文を作成する。

 新条約の柱は二つある。発明日ではなく出願日が最も早かった企業や個人に特許権を与える「先願主義」を採用すること。これは,米国が独自の「先発明主義」を放棄することを意味する。もう一つは,発明を学会・文献などに公開してから特許を出願するまでの猶予期間(グレース・ピリオド)を,米国基準に合わせた1年とすることである。米国と日欧が,それぞれ一歩譲った形といえる。

 元々日米欧の特許庁は,世界の国々が参加する世界知的所有権機関(WIPO:World Intellectual Property Organization )の場で,基準統一の合意を目指していた。だが,WIPOに参加した発展途上国は「基準を統一すると先進国の特許権が自国に適用されやすくなり,自国の企業・個人に不利益になる」として,基準統一を拒否。このため日米欧の特許庁は,先進国による認定基準の統一を目指し,2005年の時点で先願主義に統一することで合意していた。今回,新条約の締結で合意した41カ国の特許出願件数は,世界の85%を占める。

 ただし,米国の議会が先発明主義の放棄を認め,条約を批准するかどうかは不透明である。2005年6月には,日米欧での合意に基づき,先願主義への転換を柱とする特許法改正案が米国下院に提出された(Tech-On!関連記事)。だが,個人発明家などの権利を擁護する勢力の反対にあい,未だに可決のメドは立っていない。「この新条約が,米国の先願主義への転換を後押ししてくれればいいのだが・・・」と,特許庁関係者は気をもんでいる。