図1 大容量化でNANDフラッシュ・メモリの市場は拡大
図1 大容量化でNANDフラッシュ・メモリの市場は拡大
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図2 2008年には4ビット/セルを実現
図2 2008年には4ビット/セルを実現
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 NANDフラッシュ・メモリNORフラッシュ・メモリ,DRAMとこれからのメモリ市場を制するための条件は何か…。東京国際デジタル会議では「メモリ無限時代への挑戦」と題してメモリ・メーカーが今後の市場を展望した。

 注目は東芝によるNANDフラッシュ・メモリ市場の分析である。登壇したのは東芝セミコンダクター社 副社長の斉藤昇三氏。「一年間に出荷するNANDフラッシュ・メモリの総ビット数は既にDRAMを超えた」とする斉藤氏は,2008年にも3兆円市場に成長するとの見通しを示した。この額はDRAMと同程度で,DRAMに比べてビット単価の安いNANDフラッシュ・メモリが出荷金額でも肩を並べる日は近いとの見解を示した。

 今後のNANDフラッシュ・メモリの市場について東芝の斉藤氏は,価格が下がればそれに応じて市場はどんどん拡大するとの見解を示した(図1)。NANDフラッシュ・メモリは数年前までは年率40%減で価格が下落していたが,2005年にiPod nanoが登場したこともあって,最近では年率50%減で価格が下がっているという。このまま価格が下がれば,まずはビデオ・カメラ,次にパソコンといった市場が見えてくるとした。「ビデオ・カメラでHDTV映像を1時間録画するのに必要となるストレージの容量は3G~4Gバイト。NANDフラッシュ・メモリがビデオ・カメラで使われるようになるのは時間の問題。パソコンではSSD(solid state disk)として搭載されるようになるだろう」(東芝の斉藤氏)。

 大容量化技術の多値技術についても見通しを示した。斉藤氏は,4ビット/セルとなる16値のNANDフラッシュ・メモリが2008年には開発できるとした(図2)。ただし,この際にNANDフラッシュ・メモリの読み出しや書き込みの速度が遅くなることが課題になるという。こうした性能劣化の解決のカギを握るのがコントローラICである。「NANDフラッシュ・メモリの性能劣化はコントローラICによってユーザーには見えないようにできる。コントローラICこそがこれからのNANDフラッシュ・メモリを支えるデバイスとなる。だからこそ,東芝はコントローラICの開発にも注力している」(東芝の斉藤氏)。このほか,微細化については30nmまでは見えており,2009年後半にも実現できるとする。ただし,新しいEUV露光装置が必要となる30nm以降の微細化の計画は未定という。

 シェア争いが激化しているNANDフラッシュ・メモリについて,「とにかくボリュームをこなすことが重要」とする斉藤氏はシェア1位の韓国Samsung Electronics社に一歩も譲るつもりはないとした。「NANDフラッシュ・メモリ市場は我々とSamsung Electronics社が分け合う形になるだろう」(東芝の斉藤氏)。そのために大切なのが技術開発と市場開拓を継続することだという。