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 デジタル一眼レフ・カメラ「Kiss Digital X」の発表会で,キヤノンやキヤノンマーケティングジャパンの幹部社員に話を聞いた(同カメラについての第1報はこちら)。

――液晶モニタを見ながら撮影する,いわゆるライブビュー撮影をデジタル一眼レフ機に盛り込む予定はあるか。キヤノン製品は,コンパクト機で当たり前の便利な機能を使えない。さらに,テレビへの画像出力は有力用途と今回説明していたが,HDMI端子を備える計画はあるか。

 「ライブビュー撮影にしろHDMI端子にしろ課題は順次,解決していく。そのときは別に発表会を設けるので,待っていてほしい」。

――カメラの部品が大きく変わる中でも,一眼レフ・システム(カメラ内部のミラーを中核とする機構・光学部品群)は不変なのか。

 「一眼レフ・システムが不変とは思わない。なぜなら一眼レフ・システムは,美しい一瞬を切り取るという目的を実現する手段に過ぎないからだ。この目的を満たすよりよい手段を,当社もいろいろと研究しているところだ」。

――特にミラー(カメラ内部でファインダーと撮像素子に光を振り分ける可動式の鏡)の今後について聞きたい。ミラーは連写性能や動画撮影を制約している。ただし,その動作音などから一眼レフらしさを演出する役割もある。

 「ミラーも手段に過ぎない。大切なのは,どれだけファインダーが使いやすいか(ユーザーが見た像と撮影結果の差が少ないか)ということ。この目的を実現するためミラーをなくし,ファインダーに小型液晶パネルを使う方法もあるが,現状ではリアルタイム性などが損なわれる」。

――Kiss Digital Xには書面や実物をさっと見る限り欠点らしい欠点が見当たらない。値付けも他社品よりむしろ低い。確実に大量に売れることを念頭に設計したと感じる。ただ一方で,カメラ市場のリーダーとして,新しい付加価値を市場に問うような機能を備えてもよいのではないだろうか。

 「想定販売台数がわずかな機種ならば損益が知れているから冒険もできるだろうが,Kissはそういう機種ではない。なお,新しい付加価値というわけではないが,他社よりもむしろ細かなニーズに対応したという例なら既にある。天体撮影に向けた「EOS 20Da」は,我々が思った以上にたくさん売れた」。

――ニコンの「D80」と比べると,ファインダー倍率(ファインダーから見える像の大きさ÷肉眼で直接見た被写体の大きさ)は,Kiss Digital Xが0.8倍にとどまるのに対し,D80は0.94倍と高い。

 「価格とのバランスから考えればファインダー倍率が0.8倍でもユーザーは納得してくれはず(想定実売価格はKiss Digital Xの方が3万円安い)。仮に,現状で使っている鏡(前述のミラーに当たった光を,光学ファインダーに届ける役割を担う)ではなく,ガラス製のペンタプリズムを用いるように変更すれば,我々もD80と同等の仕様値を実現できるだろうが,部材費が高くなる。ニコンの『D70』『D70s』のように樹脂製ペンタプリズムを使う方法もあるが,ファインダーに映る像の画質が低下する恐れがある」。

――オートフォーカスの精度について聞きたい。「前機種はF5.6相当だったがF2.8相当に向上した」という説明があったが,これはどういう意味か。

 「絞り値がF5.6の時に比べてF2.8の時はピント合わせがよりシビアになる。被写界深度(被写体の前後でピントが合う範囲)がぐっと狭くなるからだ。今回のオートフォーカス機能は,合焦度合いが急峻に変化するF2.8の時でも,ピントをしっかりと合わせられる。今回のオートフォーカス機能は,当社の中級デジタル一眼レフ機『30D』の部品を転用して実現した」。
 「オートフォーカスの精度を高めたのは,画素数が1000万超になったから。ピントが甘いままではこの画素数が無駄になってしまう」。

――ゴミ対策のために,なぜ光学ローパス・フィルタを震わせるようにしたのか。他社は専用の膜を振動させている。

 「膜を設けると光の損失や反射が生じて,画質が低下する恐れがあったためだ。振動させる光学ローパス・フィルタは通常,数層で構成する同フィルタのうち被写体側の1層のみ。振動させる対象物の質量を減らすことで,超音波モータの外形寸法を抑えた。ローパス・フィルタを分離しても機械的な強度に問題がないことは確認済みである」。

――ゴミ対策に向けたパソコンのアプリケーション・ソフトウエアは,どのくらいの大きさで写るゴミや汚れを目立たなくできるのか。

 「撮影条件によって変わるが,画像の中央付近で20~30画素の大きさで写るゴミや汚れなら対処できる。ゴミや汚れの周辺部の画素における輝度データなどを基に消し込む。今回のソフトウエアはキヤノンが開発した」。