ソフトバンクは2006年6月23日,東京・丸の内の東京国際フォーラムで第26回定時株主総会を開催した。昨年までは総会の後に続けて開催していた「経営近況報告会」を,総会の中に取り込むスタイルに変え,1時間弱の時間を割き,最近の経営状況と今後の方針について同社 社長の孫正義氏が自ら株主に説明した。

売上げ1兆円突破に感慨深げ


 孫氏は冒頭,グループの2006年3月期の連結売上高が初めて1兆円を突破したことについて,「ミカン箱の上に立って志を語っていた頃からの目標をついに達成した」と感慨深げに語った。また,「ブロードバンド・インフラ」,「インターネット・カルチャー」,「固定通信」の主力3事業については,「すべての指標で黒字化し,先行投資からいよいよ収穫期に入った」と経営の安定を強調した。

 ボーダフォンを買収する形で参入を決めた携帯電話事業に関して孫氏は,「携帯電話の市場はコンピュータと放送の市場をすべて合わせたより大きい8.7兆円の規模がある。他の業界では多数の企業が競争しているが,携帯電話は1.3兆円の利益を3社で分け合っており,利益が出しやすく,挑戦しがいがある」と有望さを強調し,だからこそ「時間をお金で買って参入を急いだ」とした。

端末にはフル・ブラウザーと「Yahoo!ボタン」を装備


 携帯電話事業に関しては,2006年11月に予定される番号ポータビリティ制度(mobile number portability=MNP)の導入が,「最大のチャンスであり,リスクでもある」と延べ,ライバルとの競争に打ち勝つために,
 1. 3G(第三世代携帯電話)基地局展開の前倒し
 2. 魅力的な端末の投入
 3. インターネット・サービスとの融合
 4. 営業力の強化
という四つの強化ポイントを挙げた。

 3G基地局数は現在の2万3000から今年中に4万6000まで増やす。もともとボーダフォンが立てていた3年計画を前倒しする形。「基地局メーカーなどに支払いの繰り延べをお願いする」(孫氏)ことで,調達資金を最小限に抑える。また,パナソニック モバイルコミュニケーションズなどから新たに端末の供給を受けることで,「若者に受け入れられる最先端の機種を拡充する」(孫氏)計画だ。

 インターネット・サービスとの融合に関しては,グループ会社であるヤフーのサービスを徹底活用する方針を再確認し,「開けばYahoo!,押せばYahoo!という形にしたい」と,端末に専用のアクセス・ボタンを設ける方針を示した。また,総会後半で株主からの質問に答える形で「全機種に使い勝手の良いフル・ブラウザーを搭載する。いま開発を進めている」と明かした。

FTTRサービスの導入に前向き


 また,FTTH(fiber to the home)事業に関する別の株主からの質問には,「現時点ではADSLと光ファイバーの体感速度に違いはない。また,現在の枠組みではNTTグループと公正な競争ができない」という従来からの主張を繰り返した後,「現在の枠組みの下でも,安価に光ファイバー(のサービス)を提供できる画期的な新技術を開発した。サービス開始に向けて総務省などと調整している」と,近々の新サービス投入を示唆した。この新技術とは,同社が2006年2月に神奈川県などで実験を行ったFTTR(fiber to the remote terminal)を指すと思われる(関連記事)。FTTRはユーザー宅の近くまで光ファイバを引き,そこから宅内までを高速DSLや無線でつなぐ形態をとるサービス。