松下電器産業は,同社として初めてのレンズ交換式デジタル一眼レフ・カメラ「DMC-L1」を,2006年7月22日に発売する(ニュース・リリース)。同社による想定実売価格は,ドイツLeica Camera社が品質認定した交換レンズ1本を標準添付して,25万円前後である。
この価格は,現在好評を博すニコンの中級機「D200」に標準交換レンズを1本添付した場合と同等,もしくは上回る水準である。これを反映してか,DMC-L1の国内向け生産台数は3000台/月と,決して多くない。なお松下電器産業は,L1と標準交換レンズを別々に売らない予定である。
Leicaを名乗る以上は妥協せず
標準添付する交換レンズは,手ブレ補正機構を内蔵している。焦点距離が14~50mm(35mmフィルム判換算で28~100mm)の3.6倍ズーム。開放F値はF2.8~F3.5と明るい部類に入る。松下電器産業は,このレンズの設計・製造にあたりドイツLeica Camera社と,フォーサーズ・システムに向けたレンズの品質基準を策定した。フォーサーズ・システムとは,オリンパスが提唱した4/3型撮像素子を使う交換レンズ接続規格である。
品質基準の詳細について,松下電器産業は明かさなかったが,「ポートレート写真で生きるボヤケ感や,風景写真で雰囲気も伝えられる解像感を目指した。歪曲収差や画像周辺部の解像度,フレア/ゴーストなどに厳しいハードルを設けている」(説明員)という。
心地よさがウリ
松下電器産業はDMC-L1を「最もエモーショナルなデジタル一眼レフ・カメラを目指して開発した」(同社 DSCビジネスユニット長の吉田守氏)。往年のLeica Camera社製品を思い起こさせる外観を採用したほか,カメラ本体に備えたシャッター速度ダイヤルや,交換レンズの絞りリングの使用感,各種設定情報の表示方法にこだわったという。
「触って心地良いカメラにしたかった。例えばシャッター速度ダイヤルは,ちょっとした接触でズレたりしない固さと,動作の気持ちよさを求めて部品メーカーの協力を得ながら幾度も調整した。各種設定情報についても,文字をいちいち読み取るのではなく,パッと見て分かるように工夫した」(説明員)。
慣れを要すAF動作
ただし,DMC-L1は一眼レフとしては珍しいライブビュー撮影を実現したのと引き換えに,慣れを要する動作をする一面もある。ライブビュー撮影とは,コンパクト機で一般的な液晶パネルを見ながら構図を決めて撮る方法のこと。このときにDMC-L1は,通常の一眼レフ機にない動作をする。
ライブビュー撮影時にDMC-L1は,オートフォーカスを使ってピントを合わせる度にカッという音がする(この様子を写したMPEG動画)。ミラーを下ろして上げることで撮像素子への光の入射を一時的にさえぎって,ピントを合わせる受光素子に光を供給するからだ。ミラーの下げ上げ動作によってシャッター・タイムラグもわずかに生じる。
通常の一眼レフ機で,ミラーが上がるときは写真を撮るときだけで,ピントを合わせている間はミラーが下りており,光学ファインダーとピントを合わせる受光素子に光を供給している。DMC-L1は,ライブビュー撮影を実現するためにミラーを上げるので,ミラーの下げ上げ動作が必要になっている。
ミラーの下げ上げ動作を不要にするには,オリンパスが「E-330」採ったように,ライブビュー専用に撮像素子を追加すればよい(関連記事)。しかし,松下電器産業は「当初から撮像素子は1個と決めていた」(説明員)という。こうした方針を決めた背景には,ミラーの下げ上げ動作が問題になるような状況では,光学ファインダーを使ってもらおうという考えがあるようだ。
交換レンズを4本投入
松下電器産業は今回,交換レンズの投入計画も示した。2007年以降に4本発売する予定で,うち3本が光学式手ブレ補正機構を内蔵する。残る1本は,開放F値が1.4と非常に明るい,25mm(35mmフィルム判換算で50mm)の固定焦点品である。なお,デジタル一眼レフ機本体の今後の開発計画については「楽しみにして欲しい」(同社 専務役員の牛丸俊三氏)と述べるにどどまった。
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