「地図を読むのが苦手な人でも,これなら迷いにくい——」。ナビタイムとKDDIは,交差点の様子を再現した3次元グラフィックスを利用した歩行者向け道案内情報サービス(いわゆるマンナビ)を2006年4月下旬から始める。3次元グラフィックスを提供地域は,東京23区と政令指定都市における主要交差点から半径50mの範囲。利用料金は月額210円などで,3次元グラフィックスを提供していない現行料金と変わらない。
「携帯電話機でGPS搭載が実質的に義務化される期日が迫っているが,当社にはGPSケータイの先駆者として自負がある。今回のサービス拡充によってほかの国内携帯電話事業者との差を明確にしたい」(KDDI,関連記事)。
携帯電話機上で3次元グラフィックスを利用するには,主に3つの技術的な要素が必要だったという。
(1)BREWがOpenGL ESに対応すること。Javaのアプリケーション・ソフトウエアと比べて高速に動作するBREWのソフトウエアでも,十分な実行速度を得るにはOpenGL ESがもたらす高い描画効率が必要だったという。
(2)KDDIが保有するGPSの測位精度を高めるノウハウ。「測位精度が悪いと,ユーザーが建物の中にいることになってしまう」(ナビタイム)。
(3)ナビタイムが開発したファイル形式「VFormat」と「V3Dformat」。VFormatは,2次元の地図データを扱う。GIF形式のファイルと比べて容量を1/6程度に抑えられる。ベクトル・データなので画質を低下させずにズームすることも可能。V3Dformatもファイル容量の低減に向けたファイル形式で,1つの交差点から半径50mの範囲の3次元グラフィックスについて容量を通常の1/50ほどに減らせる場合があるという。
3次元グラフィックスの処理には,東芝製のアクセラレータLSI「T4G」を用いる。「現状では米QUALCOMM Inc.製のベースバンドLSI単体では実用的な実行速度を得られないが,これを今後解決できるか検証中」(ナビタイム)という。
ナビタイムとKDDIは,自動車搭乗者に向けた「EZ助手席ナビ」も提供しているが,こちらで3次元グラフィックスを提供する予定は今のところない。「3次元グラフィックスを提供するエリアを,現在の半径50mから広げないと,ユーザーが3次元グラフィックスを見たいときに見せられない。移動速度が歩行者より格段に速いからだ。『CDMA 1X WIN』の通信環境が常に良好ならば可能かもしれないが,まだ検証していない」(ナビタイム)。
3次元画像を利用したマンナビに対応する機種は当初,2006年4月下旬に発売する「W43T」のみである。今後は「CDMA 1X WINに対応するほぼ全機種で利用できるようにしたい」(KDDI)という。さらに東芝製端末である「W31T」「W32T」「W41T」「neon」と,ソニーエリクソン製の「W41S」のユーザーも,2006年5月下旬にBREWのアプリケーション・ソフトウエアを更新すれば,今回のサービスを利用できる。
ナビタイムとKDDIが提供する「EZナビウォーク」の契約数は,75万件(月々の料金支払いを選んだ契約のみ,2006年2月時点)。KDDIの携帯電話契約数のうち,GPS対応端末が占める割合は,2006年2月時点で78%である。