図1 モジュールの写真 左がボードとの接合側,右がアンテナ面
図1 モジュールの写真 左がボードとの接合側,右がアンテナ面
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図2 モジュールの層構成
図2 モジュールの層構成
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図3 アンテナの構造
図3 アンテナの構造
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 NTT未来ねっと研究所は,ミリ波帯の60GHz帯の送信用SoP(system on a package)を,LTCC(low temperature co-fired ceramic)モジュールという形で作製した(図1)。電子情報通信学会2006年総合大会で発表した。アンテナをLTCC基板の中に埋め込んでいるのが特徴。部品点数の削減や小型化に加えて,アンテナと送受信回路を結ぶ配線の損失を低減できるなどのメリットがある。

 NTT研は,1Gビット/秒の伝送速度を実現する無線システムとして60GHz帯の通信技術を開発中である。用途としては,(1)屋内での無線通信,(2)街角での短距離通信,(3)ガソリン・スタンドと自動車などとの間の通信,などを想定する。

 今回開発したのは,外形寸法が12mm×12mm×1.2mmのLTCC基板の中に,反射鏡付きのアンテナと,パワー・アンプ(PA),帯域通過フィルタ(BPF),電圧制御発振器(VCO)などを実装したモジュール(図2)。配線層は0.1mm×6層と0.05mm×12層から成る。LTCCの誘電率はεr=7.7,10GHzでtanδ=0.002である。60GHz帯ベースバンドLSIには,今回はInP MMIC(microwave monolithic IC)を利用した。このLSIの面積は,4mm×2mmである。

 アンテナは,反射望遠鏡に似たショート・バックファイア(SBF)型である。まず給電素子からの電波を「1次反射板」で反射させたあと,薄皿状の「2次反射板」で折り返して,モジュール外に送り出す。LTCC表面にリング状の金属板を貼り付けて1次反射板とした。次にLTCC基板内に,金属の細いリングを4層にわたって埋め込み,2次反射板を構成した(図3)。給電素子には,マイクロ・ストリップ・アンテナ(MSA)を利用した。アンテナの利得は,実測値で+7.0dBi。測定器の損失を考慮すると,9dBi以上であるという。通信距離にして5m程度をカバーすることになる。

 同社は,今回発表したほかに,MSAを並列に並べた,指向性が低い低利得タイプと,SBF型で利得が+20dBi程度の高利得タイプのアンテナを備えたタイプもそれぞれ開発中であるとした。