ACCESSは2006年2月28日,米IP Infusion Inc.(IPI社)を買収し,完全子会社化すると発表した(Tech-On!関連記事)。IPI社はIPルーター向けミドルウエア「ZebOS」の開発で知られるベンチャー企業である。ZebOSはIPv6やMPLS(multi protocol label switching)といった新しいネットワーク技術に対応したルーター・ソフトで,家庭向けの小型ルーターから企業向けL3スイッチまで幅広い製品で利用実績がある。顧客には企業向けL3スイッチ製品で著名な米Foundry Networks, Inc.や富士通といった名前が並ぶ。とはいえ,IPI社の持つ技術自体はACCESSの本業である組み込み機器向けブラウザと関連性が薄そうに見える。IPI社買収の狙いについて,ACCESS 常務執行役員取締役の楢崎浩一氏に話を聞いた。

−−IPI社買収の狙いは?

 大きく三つあります。ルーター・ソフトウエア技術,ホーム・ゲートウエイ/ホーム・サーバーの技術,そして人材確保の三つです。IPI社のルーター・ソフトZebOSは,業界で一目おかれる優秀なもの。通信事業者の利用に耐える信頼性と機能を持っています。この技術は世界中のネットワーク系企業がほしがっていた。

 ホーム・ゲートウエイ/ホーム・サーバーの技術は公表していなかったが,IPI社が2年ほど前から取り組んでいた。内容は詳しくは言えませんが,DLNA(Digital Living Network Alliance)UPnP(universal plug and play)といった技術をサポートし,DRM(digital rights management)管理の機能を持ったホーム・ゲートウエイ製品が作れる。

 IPI社はこうした優れた製品を一から作り上げました。この優秀な技術陣をぜひACCESSのグループ企業に迎え入れたかった。個々の技術に魅力があったのはもちろんですが,最終的に決断した大きな理由は彼らエンジニアの能力です。

−−ホーム・ゲートウエイの市場に進出するのか?

 そうです。実は以前から,我々の顧客企業の多くからホーム・ゲートウエイ製品の提供をオーダーされていました。まだあまり表に出ていませんが,ホーム・ゲートウエイ製品を使った具体的なサービスの準備をいくつかの事業者が急ピッチで進めています。我々としてはホーム・ゲートウエイ製品の開発競争がすでに始まっていると認識しています。

 我々はすでに米PalmSource, Inc.を傘下に収めており,IPI社の製品と組み合わせてOSまでを含めたソフトウエア・パッケージを顧客企業に提供できます。顧客はこれを使うことで,簡単にホーム・ゲートウエイ/サーバーを製品化できます。

 もう一つ,予想外だったのが既存製品であるZebOSへの引き合いです。これには正直,驚いています。もともと技術的な評価は高かったのですが,IPI社が小規模なベンチャー企業だったことが障害になって採用が見送られていた。今回,ACCESSの傘下に入ったことで,改めて採用を検討し始めたということのようです。

−−ホーム・ゲートウエイ製品の完成度は?

 現状ですでに出来上がっています。ただし,ACCESSの基準で見ると,使い勝手など細かい部分で完成度が甘いところが残っています。そこで,ACCESSとIPI社の技術者が協力して製品をブラッシュアップしています。

−−ケータイとの連携は?

 当然,考えています。というか,単純なホーム・ゲートウエイならACCESSが作る必要はないですよね。携帯電話機はもはや単なるコミュニケーション手段ではありません。最良の個人認証手段です。我々が提供する製品ではこうした側面を意識した使い方を提供できると思います。