米国サンディエゴ市で開催中の,最先端のソフトウエア技術などを探るイベント「O’Reilly Emerging Technology Conference」の基調講演で,米Microsoft Corp.のCTOを務めるRay Ozzie氏は,「Live Clipboard」と呼ぶ技術のデモを見せた。この技術を使うと,WWWサーバ上で動作するWebアプリケーションの情報を他のWebアプリケーションやパソコン上のソフトウエアと簡単にやりとりできる。同氏は,パソコン上の複数のソフトウエアが連携する上でクリップボードを使ったいわゆる「カット・アンド・ペースト」が大きな役割を果たしたとみており,それと同様なことをWebアプリケーション間で実現することを狙った。同氏は一カ月ほど前に,「Webアプリケーションの間でユーザーが簡単に情報を受け渡すクリップボードとはどのようなものか」と自問自答して,Live Clipboardの開発を始めたという(Live Clipboardについて書いたOzzie氏のブログ)。
現在も,Webアプリケーションが表示するテキストを,カット・アンド・ペーストすることはできる。Live Clipboardは,テキストだけではなくテキストの属性なども同時に受け渡すことを目指している。例としてOzzie氏は,イベントの情報を提供するWWWサイトにあるイベントの情報をコピーして,同社のWebアプリケーション「Windows Live」(Tech-On!の関連記事)の一機能「Windows Live Mail」のカレンダーに貼り付けてみせた。コピーするデータがイベントの情報であることが伝わるため,スムーズな連携を実現できる。
Live ClipboardをRSSなどのプロトコルと併用すれば,ポッドキャストなどの情報をユーザーのパソコンや他のWebアプリケーションに定期的に転送する仕組みを作ることも可能とした。「RSSは,今後のインターネットの『柱』になりつつあるが,まだ一般のユーザーが使うほどには普及していない」(Ozzie氏)。同氏は,Live Clipboardによってユーザーが簡単にRSSを利用できるようになり,普及が推進されると期待している。
Live Clipboardは,DHTML(dynamic HTML)で記述した制御要素をWebアプリケーションに組み込むことで実現する。Live Clipboardは,XMLに基づく「Live Clipboard XML data format」で記述した情報を扱える。現在はまだコンセプトの段階で,正式な出荷時期は未定である。