今,中国では家電量販店の成長が著しい。小売業の年間売上高ランキングで上位に名を連ねるほどである。その代表格が国美電器。地下鉄2号線に乗って中山公園駅で下車すると駅のすぐ近くにある。早速,ホテルの最寄駅から国美電器に向かう。電車賃は3元(1元は約15円)。驚いたことに上海の地下鉄の切符は非接触ICカードを利用していた(図1)。
週末には1店舗当たり2万人~3万人の集客を誇るといわれる家電量販店もさすがに平日の客の入りは多くなかった。売り場にいる客を見渡してみると,近くにいるのは私以外に数人。店側から見れば,私は明らかに怪しい人間だった。中国語もしゃべれず,ただ商品を眺めているだけだからだ。しかも,その場にそぐわないスーツを着用している。取材の合間だから仕方ないとはいえ,浮いた存在だったのは間違いない。
それにしても,家電量販店の中は販売員の数が多い。とても日本の比ではない。洗濯機や冷蔵庫といった白物家電の売り場でさえ,それぞれに7人~8人の販売員がいる。店内は販売員だらけだ。このうち半数は家電量販店が自ら雇い,残りの半分は機器メーカーから派遣されているという。なんでも人件費が安いため,販売員を多くしても問題ないそうだ。彼らには販売した台数に応じてインセンティブが支払われるようになっており,基本給は安く抑えられているという。
それにしても,薄型テレビの売り場の広さには驚かされる。とにかくメーカー数の多さに圧倒される。ソニー,松下電器産業をはじめとして韓国Samsung Electronics社,韓国LG Electoronics社,中国TCL社,中国Haire社など,実に多くの薄型テレビが展示されている(図2)。中国に向かう前,私はこう聞いていた。「中国でも薄型テレビの需要は大きくなっている。売り場面積が最近,CRTと半々になってきたくらい」。このコメントから私は少し前の日本の家電量販店を想像していた。しかし,実際の売り場は想像をはるかに超えていた。展示のほとんどが薄型テレビで,CRTは隅の方で細々と販売されている状態だ。
画質に関してはいうまでもなく日本メーカーと中国メーカーでは雲泥の差である。薄型テレビをめぐる中国人の消費動向については興味深い話がたくさんあるが,それは本誌に取っておく。さて,次回はITモールの潜入レポートをお届けする。そこは,かつての秋葉原を彷彿とさせるものがあった。