街を普通に歩いてます
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日韓のブランドがかの地で競う
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 14年前にインドを旅行したとき,テレビは一般市民にはそうそう手の届かない製品でした。マドラス(現在のチェンナイ)を訪れた際に2,3日居候をした家庭では,そのテレビが居間に鎮座していました。夕方ともなると近所の老若男女が,勝手に入ってきてテレビを見始めます。テレビは,家族同様の付き合いをする皆の共有物同然だったのです。ちなみに,視線を釘付けにしていたのはクリケットのワールドカップでした。その後,テレビは急速に広まったようです。といっても世帯平均の普及率は全国平均でまだ30%程度に過ぎません。

 それではインドでは今どんなテレビが売れているでしょう。ニューデリーの郊外にある販売店で調べてみました。日本でいうところの町の電気店に近い風情です。品揃えはそれほど多くありません。店員に聞いてみるとどうやら,29型のCRTテレビが売れ筋のようです。もっとも,訪れた店は裕福層が多く住む場所に近いため,インド全体で29型テレビが売れているとは限りませんが。

 さっそく店員に聞いてみます。
「どれがお勧め?」
「やっぱりLGかSamsungだね」
「そこにあるソニーはどう?」
「絵はきれいだけどね…」

 値段を聞いてみて彼の意味するところが分かりました。Samsung社とLG社の製品はどちらも1万7000ルピー(約4万2000円)ですが,ソニーの製品は2万5000ルピー(約6万2000円)と,ほぼ1.5倍するのです。これではよほどのソニー好きでないと手が出ないかもしれません。一緒に並んでいたPanasonicブランドの製品は2万ルピー(約5万円)と少しお得でした。

 別の店では液晶テレビも売っていました。32型でPHILIPSブランドの製品が12万5000ルピー(約31万円),HYUNDAIブランドが12万ルピー(約30万円)と,日本より割高です。それでも裕福層に結構売れているようでした。しばらく眺めていたら,買う気があると思われたのか,店員が真剣な面持ちで耳打ちをしてきました。

「いま決めてくれるなら5000ルピーくらい引いてもいいよ」

 インドまで来て液晶テレビを買うわけにはいかないので,早々に退散しました。