図1 経営における自身の健康リスクを聞かれ,「前髪は危機的だが,健康は万全」とおどけて聴衆を沸かせた孫正義氏
図1 経営における自身の健康リスクを聞かれ,「前髪は危機的だが,健康は万全」とおどけて聴衆を沸かせた孫正義氏
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図2 動画検索の新インタフェース
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 前回の第2四半期決算の話題が「ケータイ事業への参入」(Tech-On!関連記事1)だったとすれば,今回の話題の中心は「無料動画配信サービス」だった——。

 ソフトバンクは2005年第3四半期(10月~12月)の決算発表で,同社の無料動画配信サービス「TV Bank」のデモンストレーションを披露した(Tech-On!関連記事2)。今回公開したのは,インターネット上の無料動画をキーワードで検索するための新しいユーザー・インタフェースである。「トリノ」「皇室典範」といったキーワードを入れると,関連する映像とそのリンクを表示できる。

 最近では,東京放送(TBS)や毎日放送をはじめ各テレビ局がニュース映像の無料配信を始めており,検索で得られる動画情報が質・量共に飛躍的に向上している。同社はこの流れに乗って「映像検索のポータル・サイト」の地位を確立したい考えだ。このために,使いやすいユーザー・インタフェース技術を中心に100件以上の特許を申請したという。具体的には,動画にマウス・カーソルを合わせると動画の先頭部分が20秒間再生される技術や,あるキーワードに関連した動画をつないで1つのテレビ放送のチャンネルのように見せる技術などである。

 ソフトバンク 代表取締役社長の孫正義氏は,動画配信サービスをさらに普及させるには,著作権にかかわる法制の改革が必要だと強調した。「通信における著作権の管理が煩雑な日本とは異なり,既に米・韓・台では通信の分野でも放送と同じく著作権を一括管理できる仕組みが整っている。日本は(ADSLやFTTHの普及で)ブロードバンド環境では先進国なのに,動画のインターネット配信では後進国となりつつある」(同氏)。

 現在TV Bankはベータ版として公開している。2006年4月1日から「Yahoo!動画」と統合した形で本格的にサービスを開始する。

営業損益に続き経常損益も黒字化

 前回の決算発表で半期の営業損益が4年半ぶりに黒字になったのに続き,今四半期では経常損益が黒字となった。黒字幅は112億円である。4月~12月の累計では22億円の赤字だが,このまま好調に推移すれば,2005年度通期の経常損益も黒字化が視野に入ってきた。営業利益は235億円で,モデムレンタル事業の売却益を除いた「実力値」(孫氏)は161億円という。これは第2四半期と比べ,約2倍の水準である。純損益も220億円の黒字である。ソフトバンクとしては,ADSL事業を開始して以来の「3点セットで黒字達成」(孫氏)となった。

 ただし,参入を予定する携帯電話事業についての具体的な説明はあまりなかった。サービス開始当初にMVNO(仮想移動体サービス事業者)としてボーダフォンの回線を借りる可能性については,「あらゆる可能氏を検討している段階」(孫氏)として明言を避けた。米QUALCOMM Inc.が開発した携帯電話向け放送プラットフォーム「MediaFLO」の導入には「大変興味がある」(孫氏)とし,総務省に周波数の割り当てを申請する考えを示した。なおMediaFLOについては,国内ではKDDIが既に参入を表明している(Tech-On!関連記事3)。

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