中国製プリント配線基板の調達代行を手掛けるKFE JAPANがデジタル家電事業を拡大する。2005年11月には,エヌエイチジェイ(NHJ)で商品企画やEMS企業の管理を担当していた藤岡淳一氏を迎え入れた(NHJについての関連記事)。デジタル家電の調達に事業領域を広める目的を,KFE JAPAN 代表取締役 社長の原田隆朗氏と,藤岡氏(同社 デジタルコンシューマ部 部長)に聞いた。
——プリント配線基板とデジタル家電では,業務フローも顧客も異なります。畑違いの事業ではないのですか。
原田氏 扱う商品がデジタル家電になっても,プリント配線基板で培った知見や組織は生きます。我々が手掛けるデジタル家電は,流通業者向けOEMを主体とするからです。我々は顧客自らが中国企業に発注するよりも,高品質のプリント配線基板を速く,安く調達することで事業を成長させてきました。デジタル家電でも,目指す方向は同じです。
藤岡氏 実際,当社のプリント配線基板の業務フローと,私がNHJでやっていた仕事はよく似ています。いずれも中国の製造受託企業を発掘し,商品を企画して日本の顧客に商品を速く,安く納める。加えてKFE JAPANは,品質保証に非常に力を入れています。全従業員210人のうち中国・シンセンにいる140人の主な仕事は品質保証と調達です。この人的資源をデジタル家電にも向けます。
原田氏 デジタル家電事業の年間売上高は,短期的にプリント配線基板事業の1/3に当たる30億円ほどにしたいですね。将来はデジタル家電事業を,プリント配線基板事業を超える水準に伸ばせると考えています。
——OEMを主体とする点がNHJとは違いますね。
藤岡氏 そうです。「INGINI」や「EXE MODE」といった自社ブランド品もインターネットやテレビ,カタログを介して売りますが,あくまでOEMが主。自社ブランドは従です。OEMは在庫リスクが少ない上に,流通業者のニーズが結構,強いのです。デジタル家電をちょっとした景品に使おうという声もあります。
これは流通業者にとって「帯に短し,たすきに長し」という状態の商材が多いことが影響しています。例えば,現在絶好調の携帯型音楽プレーヤですが,たくさん売れる「iPod」は小売店がとれる利益率が低い。方や利益率が高い他社製品は,あまりに量が出ない。だから小売店は,今後ますます自社ブランド品を拡充するのではないでしょうか。米Wal-Mart Stores Inc.のようにね。
小売店が気にする商品の修理やユーザー・サポートは,当社が全面的に担う。日本の消費者は,海外に比べて商品の品質に厳しいですから。ここはアジア系の企業や,単に製品を輸入する商社との差異化点です。修理やユーザー・サポートの心配がなくなれば,デジタル家電を扱った経験がない小売店が当社と取引を始めてくれることも期待しています。
——KFE JAPANはどんなデジタル家電を手がけるのですか。
藤岡氏 私は時期によって扱う商品を決めます。つまり,当該商品を扱う国内大手メーカーが低価格化競争の消耗戦に突入しているかどうかをみるのです。消耗戦になると,国内大手はみな高付加価値品に注力したがります。すると,ポッカリと空いた市場ができるのです。
ちょっとアナログ時代の家電の販売状況を思い出して欲しいのですが,ソニーや松下電器産業が強かった一方で,アイワやカシオ計算機,船井電機といった企業が,しっかりと低価格品のニーズに応えていましたよね。私はKFEでこの役割を担いたいんです。
KFEでは,DVDプレーヤやデジタル・カメラ,携帯型音楽プレーヤに加えて,DVDレコーダや中小型液晶テレビも手掛けます。DVDレコーダは2006年春に市場投入できます。ダブル地デジ(地上デジタル放送)チューナ搭載もいいけど,かつてのVTR並にサッと使える製品があってもいいんじゃないでしょうか。液晶テレビは7インチ型とか15インチ型といった,家庭における2台目,3台目の需要に的を絞ります。このほか,電気ポットなどの生活家電と呼ばれる分野の中にも,期待できそうな商品があると考え始めています。