2005年下半期を振り返るべく,Tech-On!ではテーマサイトごとに「2005年下半期トップ10」をお送りしています。本記事では「組み込み開発」に掲載した7月~12月の記事から主な動きなどを取り上げて,テーマサイト・マスターである日経エレクトロニクスの進藤智則記者に下半期を振り返ってもらいます。(Tech-On!編集部) |
テーマサイト「組み込み開発」で最も注目を集めたのは,ソニー・グループと東芝,米IBM Corp.が共同開発した次世代マイクロプロセサ「Cell」関連の話題だった。アーキテクチャの概要は2005年2月に発表したが,2005年8月には命令セットなどの仕様書を公開,2005年9月には東芝がリファレンス・セットを発表,2005年11月にはシミュレータや開発ツールの配布を開始するなど,続けざまに話題を振りまいた。
安価なマイコン学習キットが相次ぎ登場
機器開発におけるソフトウエアの比重の増大により,組み込みソフトウエア技術者は人手不足といわれる。こうし不足を少しでも解消しようと,それまで回路設計などのハードウエアを手掛けていた技術者やエンタープライズ分野のソフトウエア技術者を組み込み分野に呼び込もうとする動きがある。こうした組み込み分野に不慣れなエンジニアに向けて,マイコンの使い方やデバイスの制御の基本を学ぶための学習キットが1万円以下の低価格で登場し始めたのも,2005年下半期の顕著な動きだった。
【ESEC】激安マイコン学習ツール,富士通が展示 | 7月1日 |
【ESEC続報】こちらはブレッド・ボード付き,NECエレのマイコン学習キット | 7月6日 |
組み込み業界でも買収や出資
アプリックスやACCESSなど,組み込み分野のベンチャー企業が新しい局面に入る動きも目立った。ACCESSはこれまでのブラウザ事業に加えて,さらなる成長戦略を描くべく携帯電話機向けLinux事業に進出するほか,アプリックスはNTTドコモから130億円の出資を受け,携帯電話機におけるプラットフォームの構築を狙う。
ACCESS,PalmSource社を買収 | 9月9日 |
「次世代ケータイの基盤ソフト作りに使う」,NTTドコモの出資を受けたアプリックス | 11月30日 |
組み込み向けデータベースも登場
デジタル家電や携帯電話機などで扱う情報量が増えたことで,組み込み分野でもいよいよデータベースを用いる動きが出てきた。これまでこうしたデータ管理は機器メーカーが独自にソフトウエアを開発して用いることが多かったが,専用品も流通し始めた。
「組み込みソフト危機から脱出するには,データ管理に手を付けろ」 | 9月30日 |
【ET2005】日立らが「Entier」をデモ,カーナビの経路探索をSQLで記述 | 11月16日 |
【ET2005】東芝情報がENCIRQ DFFを音楽プレーヤに適用したデモを展示 | 11月16日 |
形式的手法も注目を集め始める
2005年上半期には,形式的手法や形式検証などの発表が相次いだが(Tech-On!関連記事),(Tech-On!関連記事),2005年下半期にもこうしたフォーマル・メソッド関連のセミナーやシンポジウムが相次いで開催されていた。形式的手法に関する詳細な情報は,日経エレクトロニクス誌の特集記事「ソフトウエアは硬い」を参照いただきたい。
形式検証への取り組み進めるキャッツ,「SCADE Drive」販売でCDAJと提携 | 9月8日 |
応答性が増した組み込みLinux
組み込みLinux関連では,リアルタイムOS並みの応答性を実現した組み込みLinuxの話題が注目を集めた。2005年下半期のアクセス数で10位にランクインしているくらいである。携帯電話機やDVDレコーダなど広く普及し始めた組み込みLinuxが,ついに技術面でもリアルタイムOSに追いついてきた。
MontaVista社,リアルタイムOS並みの応答性を備えるLinuxを開発 | 8月4日 |
ついに組み込みLinuxの応答性がリアルタイムOS並みに,MontaVista社が製品発売 | 9月7日 |