2005年第1四半期から増え続けている半導体生産用のシリコン・ウエハーの出荷量は2005年12月まで落ちずに推移しそうだ。例年,年末に調整が入るのが普通だが2005年は常識を覆して好調だ。2006年第1四半期は季節要因で落ちる見込みだが,それでも例年に比べれば落ち込みは少なくなる見通し。つまり半導体メーカーは総じて好調と言える。

 この好調を支えているのは,携帯電話機と薄型テレビ向けICとNAND型フラッシュ・メモリ,それにDRAMだ。

 NAND型フラッシュ・メモリは供給不足が続いているため,2006年も生産ラインの稼働率が落ちることはない。一方,DRAMは,2005年第4四半期に供給過剰から価格は下落した。しかし,供給過剰とはいえ最大の需要先であるパソコンの出荷台数は堅調に伸びており,DRAMの生産ラインの稼働は落ちずに推移するだろう。これに対して携帯電話機と薄型テレビ向けICは,2006年の半導体市況にとって懸念材料になる。

大手携帯電話機メーカーは強気な計画

 2005年の携帯電話機メーカー大手5社の生産台数は絶好調だ。フィンランドNokia Corp.,米Motorola, Inc.,韓国Samsung Electronics Co.,Ltd.,韓国LG Electronics Inc.,英Sony Ericsson Mobile Communications ABは,各社ともに携帯電話機の世界市場全体の伸び率を大きく上回る(図)。好調な2005年を受けて,大手5社の2006年前半の生産計画は強気だ。例年,調整時期に当たる第1四半期に向けて,そのための部品発注が2005年末は落ちていない。

図●携帯電話機メーカー大手5社の成長率(2005年予測)

 2005年の携帯電話機の生産台数シェアは,大手5社合わせて対前年比6ポイント増の約75%に達する見込みだ。ここまでシェアが高まると,さすがに5社そろって市場全体の伸びを上回る勢いで伸び続けるのは難しい。2006年前半は強気な大手メーカーだが,大手の中からも負け組が現れ,生産調整を余儀なくされるだろう。

トリノ五輪とワールドカップ前の需要に期待する家電メーカー

 2005年に薄型テレビの出荷が急激に増えた。デジタル家電の中で唯一好調を維持していると言ってよい。当然,テレビ・メーカーは,2006年2月に開催されるトリノ五輪と2006年6月のサッカー・ワールド・カップ前の商戦を狙っている。2004年のアテネ五輪前にテレビ需要が盛り上がったのと同じだ。しかし,アテネ五輪でもそうだったが,このようなイベント前の需要は,需要の先食いをしているだけで,イベント終了後は需要が急激に冷え込むのが普通だ。

 ワールド・カップ終了後の2006年後半に半導体全体をけん引する電子機器が見当たらない。2006年の半導体市場は,前半は比較的好調だが,後半は失速するのではと懸念する見方も出始めた。