2012年までのNAND型フラッシュ・メモリの需要をメモリ・カードや携帯電話機などNAND型搭載機器とその搭載容量でシミュレートした。その結果によると,2012年はビット換算で2005年の約20倍の需要になる(図)。そのときの最大市場はパソコンである。

図●NAND型フラッシュ・メモリの長期需要予測(1Gビット品換算した値)

10Gバイト未満なら2010年にはHDDより安くなる

 パソコン・メーカーは,パソコンにNAND型フラッシュ・メモリを搭載することを検討している。OSやアプリケーションをNAND型に保存しておくことで,OSやアプリケーションの立ち上げ時の消費電力を減らすことが狙いだ。この時点ではハード・ディスク装置(HDD)とNAND型フラッシュ・メモリは共存する。そのため,セキュリティを確保するためにコストをかけてもよい高級機種か特殊な用途に限られる。

 そして,いずれはHDD代替を狙う。これまで,HDDに比べてNAND型フラッシュ・メモリはビット単価が高いため,HDD代替はできなかった。しかし,必要なデータ・ファイルはサーバに保存し,OSとアプリケーションだけをパソコンに搭載する場合,パソコンに内蔵する容量は8Gバイトで十分だ。8GバイトならNAND型フラッシュの方が安くなる可能性がある。現在のNAND型フラッシュの価格下落ペースが続けば,2010年には8Gバイトで5000円を切る。HDDの最低OEM価格は6000円程度なので,NAND型フラッシュの方が安くなる。2012年には16GバイトでもHDDより安くなる。

 現在のNAND型フラッシュ・メモリは書き換え回数がパソコンの要求を満たしていないが,2010年までにはCPUやOSまで巻き込んで書き換え回数を減らす方策を取ればその課題も克服されるだろう。OSとアプリケーションのみを搭載し,大半のデータ・ファイルをサーバに保存するパソコンだけが対象だが,セキュリティを重視する企業用では普及する可能性が高い。

2005年にデジタル・オーディオ向けが40%

 NAND型フラッシュ・メモリの2004年の主な用途はデジタル・カメラを中心とした電子機器の記録媒体であるメモリ・カードだった。ビット換算で需要全体の約70%はメモリ・カード向けだった。しかし,2005年に状況はガラリと変わる。NAND型フラッシュ・メモリの需要の約40%をデジタル・オーディオが占め,メモリ・カードとほぼ二分する。これは米Apple Computer, Inc.のデジタル・オーディオ「iPod nano」の影響が大きい。それまで256Mバイト~512Mバイトだった1台当たり搭載容量を一気に2Gバイト~4Gバイトに引き上げたからだ。2006年以降もNAND型フラッシュ・メモリ需要に占めるデジタル・オーディオ比率は高い状態が続く。一方,携帯電話機向けでもNAND型フラッシュ・メモリの需要が増えている。携帯電話機本体に搭載する分とカード・スロットの装備率の上昇で,2006年以降はNAND型フラッシュ・メモリ需要全体の20%を携帯電話機向けが占める。

 デジタル・カメラの記憶媒体に始まり,デジタル・オーディオ,携帯電話機,そしてパソコンとNAND型フラッシュ・メモリの用途は拡大を続ける。新規参入メーカーにも,まだ逆転のチャンスは残されている。