携帯電話機に搭載されるフラッシュ・メモリの容量が増えたことで,NOR型に代わって容量当たりの価格が安いNAND型の採用が進みつつある。2006年に世界全体の携帯電話機の半分はNAND型を搭載する見込みだ。こうした状況の中,米Spansion LLCなどのNOR型メモリ・メーカーが2005年第3四半期から新たなMCP(Multi Chip Package)を提案した。

 メモリ単体のビット単価ではNOR型よりもNAND型が有利だが,DRAMを組み合わせたMCPならばパッケージ全体の価格でNAND型に対抗できるというのがNOR型メーカーの考え方だ。例えば,NAND型1GビットとローパワーDRAM512Mビットを合わせたMCPに対して,フラッシュ・メモリ部分をNAND型512MビットとNOR型512Mビットで構成し,ローパワーDRAMを256Mビットに抑える。ローパワーDRAMが高価なので,NOR型を使う利点がある。

NOR型にとって携帯電話機は最重要顧客

 携帯電話機向けMCPでNOR型とNAND型が争っている容量は,256Mビット~1Gビットである。この容量帯は,NOR型にとっては大容量だが,NAND型にとっては小容量だ(図)。一般に半導体メモリは大容量ほどビット当たりの生産コストを下げることが可能になり,利益率は高くなる。NOR型メーカーにとって携帯電話機は稼ぎ頭だ。また,NOR型の需要を用途別に見ると,携帯電話機が全体の60%以上を占める。NOR型メーカーにとって携帯電話機向け売り上げが縮小すれば,事業そのものが立ち行かなくなる。

図●NOR型とNAND型の世界全体の容量別生産比率(2005年予測)

携帯電話機向けMCPで覇権を握る

 2005年11月21日,米Intel Corp.と米Micron Technology, Inc.がNAND型フラッシュ・メモリを生産する合弁会社の設立で合意したと発表した(Tech-On!関連記事)。発表と同時に米Apple Computer, Inc.と長期供給契約を結んだことも発表したため,今回の提携に関する報道は携帯型音楽プレーヤ向けばかり強調されている。しかし,Intel社とMicron Technology社はそれぞれ携帯電話機向けフラッシュ・メモリとRAM(Random Access Memory)のトップ・メーカーであることも見逃してはいけない。今後,フラッシュ・メモリがNOR型からNAND型に,RAMが擬似SRAMからローパワーDRAMに移ると,両社は携帯電話機向けメモリ市場のトップから転落してしまうのだ。今回の提携は,2006年には世界全体の出荷台数が8億台に届くと見られる携帯電話機のメモリ市場でトップを維持するためでもある。