登壇したTI社のAlain Mutricy氏
登壇したTI社のAlain Mutricy氏
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OMAPV2230の概要
OMAPV2230の概要
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TI社が描くOMAPのロードマップ
TI社が描くOMAPのロードマップ
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 米Texas Instruments Inc.(TI社)は,携帯電話機向けアプリケーション・プロセサ「OMAP」と,W-CDMAおよびGSM/GPRS方式のベースバンド回路を1チップに集積したLSI「OMAPV2230」のサンプル出荷を始めた。TI社は2004年7月からNTTドコモと第3世代携帯電話機(3G)向けLSIの共同開発を進めており,今回がその最初の成果となる。「アプリケーション・プロセサとベースバンド回路の1チップ品は,3Gケータイの主力市場を支える基幹部品。開発品は日本内外の3G市場に対して広く展開する方針だ」(TI社 Wireless Terminals Business Unit, Cellular Systems, Vice President 兼 General ManagerのAlain Mutricy氏)。量産出荷は2006年下半期を予定する。2006年中にも同LSIを搭載した携帯電話機が登場する見通しだ。

端末価格は最大30%の低価格化


 TI社はOMAPV2230を開発するにあたり,NTTドコモからW-CDMA方式のベースバンド回路の実装に関するノウハウの提供を受けた(Tech-On!の関連記事)。これを取り込みながらTI社は,アプリケーション処理回路やGSM/GPRS方式のベースバンド回路などの統合を進めた。現状では2個以上のLSIで構成している回路を1チップで済ませることができるため,実装面積は30%~40%削減できる。さらに外付けメモリを減らせることなどから,半導体の部品コストも15%~20%低減できるという。TI社は「部品コストや製造コストなどを含めて,端末価格で最大30%程度の低価格化につながる」と述べる。開発品は90nmルールのCMOS技術で製造する。

 3Gケータイに向けた1チップの携帯電話機向けLSIは,ルネサス テクノロジも開発を進めている。やはりNTTドコモと共同開発を進めたもので,こちらは2005年8月にサンプル出荷を始めている(Tech-On!の関連記事)。TI社はルネサス テクノロジの製品に対する優位点の1つとして「ソフトウエア資産」(TI社のAlain Mutricy氏)を挙げた。携帯電話機メーカーが端末の開発を進めるうえで,既存のOMAPに向けたアプリケーション・ソフトウエアを活用できるほか,既に市場に多数存在しているサード・パーティーのソフトウエアを取り入れれば海外市場への製品展開が容易になるとする。

現時点における最新のプロセサを搭載


 OMAPV2230に集積したアプリケーション・プロセサは,TI社の「OMAP2420」をベースに動画処理などを強化したもの。H.264/MPEG-4 AVCやWindows Media Video 9に対応したVGAの動画データを30フレーム/秒で復号化する能力を備え,500万画素のカメラ・モジュールと接続できる。なおOMAP2420は,NEC製の携帯電話機「FOMA N902i」で採用された最新のOMAP製品である(Tech-On!の関連記事)。

品種の拡充を計画


 TI社は現在,携帯電話機市場を大きく4つに分類してアプリケーション・プロセサの展開を図っている。すなわち最も高機能の領域から順に
(1)「ハイエンド・マルチメディア」市場
(2)「スマートフォン」市場
(3)「フューチャフォン」市場
(4)「バリューフォン」市場
である。
 今回のOMAPV2230は(2)の比較的高い機能を備えた機種への展開を想定したもの。TI社は今回の発表で(3)と(4)の市場にも1チップの携帯電話機LSIを展開する意向を明らかにした。なお(1)の最も高機能の市場に向けては「単独のアプリケーション・プロセサとしてハイエンド品を提供し続ける」(日本テキサス・インスツルメンツ ワイヤレス・ターミナルズ製品事業部 セルラーシステムズ ビジネスディベロップメント部 部長の大崎真孝氏)とした。