現在の液晶パネルの金額ベースでの最大市場は,出荷枚数が1億枚近いデスクトップ・パソコン用モニタだ。しかし,液晶テレビの売れ行きが絶好調のため,2007年にはテレビ向けがモニタ向けを上回って液晶パネルの最大市場になる可能性がある。

 2005年の世界全体のフラット・パネル・テレビ(液晶,PDP,リアプロ)の生産台数は,対前年比で約50%増の高い成長率になる。しかしそれでも,フラット・パネルが世界全体のテレビ生産台数に占める比率は15%でしかない(図)。CRTから置き換わる巨大市場が残っている。

図●世界のテレビの生産台数とフラット・パネル比率の推移(2001年~2004年実績,2005年~2007年予測)

 フラット・パネルで主に使用されるディスプレイは液晶パネルだ。液晶テレビは,2005年に約1800万台,2007年には2005年の倍以上の4250万台に達する。テレビより約3年先駆けて液晶パネルへの転換が進んだパソコン用モニタ市場では,液晶化率がすでに70%に達している。年間成長率が5%のデスクトップ・パソコンの出荷台数以上には液晶モニタ生産は増えない。これに対して液晶テレビはCRTの置き換えだけで高成長が続く。2005年の液晶テレビの台数はパソコン用モニタの1/5だが,2007年には1/3程度まで成長する。数量は近づく一方だ。

テレビ向け液晶パネルは大画面化で平均価格維持

 液晶パネルの画面サイズは大型化が進んでおり,2005年に32インチ型がボリューム・ゾーンになった。32インチ型は1インチ当たりの価格が5000~6000円,もう一つ上のサイズの37インチ型は1インチ当たりの価格が6000~7000円と,32インチ型にお得感があるからだ。

 パソコン用モニタ向けの液晶パネルの平均価格が約150米ドルであるのに対して,テレビ向け液晶パネルは大画面であるため約500米ドルと高い。テレビ向け液晶パネルの価格が急激に下がっているが,需要を大画面にシフトさせることで,平均単価をある程度維持できる。現在のモニタ向け価格との差を維持できれば,2007年に金額ベースの市場規模は,テレビ向けがモニター向けを上回ることになる。

 そして,その時点でまだ世界全体のテレビ出荷台数の約3割しかフラット・パネル化していない。すなわち,7割の潜在需要がまだ残っている。現在,液晶メーカーがテレビ向けを目的に積極投資しているのは,いよいよ大本命の最大市場であるテレビが液晶パネル化に動き始めたからだ。