【図1】TiO2ナノファイバーの電子顕微鏡(SEM)写真
【図1】TiO2ナノファイバーの電子顕微鏡(SEM)写真
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【図2】光触媒活性の実験。紫外線照射条件は,波長290〜390nm,強度14mW/cm。紫外線照射後にメチレンブルーが分解されて脱色する
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【図3】光触媒活性の測定結果。メチレンブルーの吸収波長(665nm)の吸収度が紫外光を照射することによって分解されて下がってくる。TiO2ナノファイバーが最も高い特性を示した
【図3】光触媒活性の測定結果。メチレンブルーの吸収波長(665nm)の吸収度が紫外光を照射することによって分解されて下がってくる。TiO2ナノファイバーが最も高い特性を示した
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 帝人は,光触媒活性を持つTiO2製ナノファイバーを開発した。繊維の直径は約200nm径。帯電させた溶液を噴出させる「エレクトロスピニング法」に工夫を加えて,これまで難しかったナノファイバー化に成功した。光触媒として多用されているTiO2微粒子に比べて,光触媒活性が高いことが確認されたとしている。今後同社は,高性能フィルターなどへの用途開拓を進める考え。

 エレクトロスピンニング法は,繊維化したい材料の溶液に高電圧を印加して,帯電させることによって溶液をノズル先端から噴出させて紡糸する技術。帯電させることにより分子同士の反発力が溶液の表面張力を超えた時に一気に噴出する原理を使っている。電極(金属製)までに届く間に繊維はnmレベルまで細く紡糸される。

 TiO2繊維の場合,まずTiO2の前駆体(Tiを含有した有機化合物)を溶媒に溶かして,エレクトロスピンニグ法によって繊維化した。それを焼成することによりTiO2繊維とした。従来のエレクトロスピンニング法では,得られる繊維は脆く材料として使えなかったが,同社は溶媒や紡糸のプロセスに工夫を加えることで構造体に使えるレベルまで特性を向上させることに成功した。

 作成したTiO2繊維は約200nm径と超極細で(図1),光触媒活性を持つ「アナターゼ結晶構造」をとることがX線回折法などで確かめられた。

 光触媒活性の実験では,色素であるメチレンブルーにTiO2ナノファイバーを浸し,それに紫外光を照射して,メチレンブルーを分解する程度を吸収波長の変化をプロットすることで確認した。比較のために,現在光触媒として多用されているTiO2微粒子(40nm径)とブランク(メチレンブルーのみ)を使用。この結果,TiO2ナノファイバーの方が色素の分解性能,つまり光触媒活性が高いことが確かめられた(図2,3)。

 理由として同社は,「まだ仮説段階だが,TiO2微粒子は凝集しやすいのに対して,TiO2ナノファイバーは凝集しにくく活性を高めやすいためではないか」としている。

 同材料はまだ,基礎研究レベルであり,今後環境浄化などのフィルターなど向けに用途開拓を行う。活性が高いことに加えて,紡糸直後に不織布状態の材料が得られることからコーティングなどが必要なTiO2微粒子に比べて,加工プロセスが簡略化されるなどのメリットがあると見ている。

 同社はTiO2ナノファイバーに加えて,アルミナ(Al2O3)のナノファイバー化にも成功しており,併せて用途開拓を進める考え。なお,同研究成果は高分子学会主催の「第14回ポリマー材料フォーラム」(2005年11月15~16日,タワーホール船堀,東京)で発表される(Tech-On!の関連記事)。