7月28日に開催された法制問題小委員会
7月28日に開催された法制問題小委員会
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法制問題小委員会終了後に会見するJASRAC 理事長の吉田茂氏
法制問題小委員会終了後に会見するJASRAC 理事長の吉田茂氏
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 文化庁長官の諮問機関で著作権法にまつわる問題を扱う,文化審議会 著作権分科会 法制問題小委員会が2005年7月28日に開催され,私的録音録画補償金に関する3回目の集中審議を実施した。米Apple Computer, Inc.の「iPod」など,記録媒体としてハード・ディスク装置(HDD)やフラッシュ・メモリを用いた携帯型音楽プレーヤを補償金の対象機器に含めるかどうかを議論したが,賛否が分かれ方向性がまとまらず,結論を先送りすることになった。

 この日の議論は,2005年6月30日に開催された前回の法制問題小委員会における集中審議の続きとなるもの(Tech-On! 関連記事)。当初は補償金の見直しについて,前回の集中審議までに議論を終結する予定だったが,結論がまとまらず,追加で議論の場を設定した。今回の議論では,事務局である文化庁 長官官房 著作権課が前回までの論点をまとめた資料を用意し,前回より踏み込んだ議論を促したものの,議論は結局平行線をたどり,方向性を見いだすに至らなかった。

 当初の予定では,2005年秋に「中間取りまとめ案」として小委員会の議論の方向性を示した文書を作成し,これを元にパブリック・コメントを募集することになっていた。この予定を変更し,「審議の経過」として補償金の改定に対する賛否を併記した文書を作成し,パブリック・コメントを募集する。補償金の改定方針について,いわば国民にゲタを預ける格好となる。その後,2005年11月をメドに法制問題小委員会としての報告書をまとめ,著作権分科会へ報告する。

「国際法違反」「私的複製規定自体の廃止も」---JASRACなど強く主張

 日本音楽著作権協会(JASRAC),日本レコード協会(RIAJ)など音楽関連の業界団体7団体は7月28日の法制問題小委員会終了後,共同で記者会見を開催。iPodなどの携帯型音楽プレーヤに対する補償金の賦課を求める共同声明を出し,権利者側の姿勢を改めて強調した。

 7団体による共同声明文では,「私的録音の機器について必要な政令指定を行わないのは,我が国の著作権制度の危機であり,ベルヌ条約やWIPO著作権条約の明確なる違反である」「私的複製を規定する著作権法第30条1項と,私的録音録画補償金を規定する同法第30条第2項は,厳しいバランスの上に立法されている。2項の規定による補償金がiPodなどの利用拡大により損なわれるならば,1項の廃止などの抜本的見直しを迫られることになる」などと,強い調子で主張。携帯型音楽プレーヤに対する補償金賦課が「差し迫った必要性」を有しているとした。

 一方で会見では,4月の小委員会で権利者側が要望した項目のうち,パソコンのHDDに対する補償金の賦課や,補償金の対象機器を政令で個々に定めることなく賦課できるようにする仕組みの創設などについては,当面の課題としないことを表明した。携帯型音楽プレーヤへの補償金賦課に的を絞り,補償金の対象拡大を図る。

 共同声明を出したのはJASRAC,RIAJのほか,音楽出版社協会,音楽制作者連盟,作家団体協議会,日本音楽事業者協会,日本芸能実演家団体協議会である。