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私的録音補償金,iPodへの賦課に慎重論相次ぐ---文化審議会

金子 寛人=日経エレクトロニクス
2005/06/30 15:58
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6月30日に開催された法制問題小委員会
6月30日に開催された法制問題小委員会
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 私的録音録画補償金の制度改定をめぐる議論が泥沼化している。文化庁長官の諮問機関で著作権法にかかわる問題を話し合う,文化審議会 著作権分科会 法制問題小委員会の会合が2005年6月30日に開催された。今回の会合の目的は,4月28日の会合に引き続き,私的録音録画補償金の制度改定についての集中討議である(Tech-On! 関連記事)。焦点の1つであった,米Apple Computer, Inc.の「iPod」をはじめとするハード・ディスク装置(HDD)内蔵型の携帯型音楽プレーヤに対する補償金賦課については,複数の委員から慎重論が相次ぎ,7月28日の次回会合で継続審議することになった。

権利者側は「適切な運用」強調

 HDD音楽プレーヤについて,日本音楽著作権協会(JASRAC)や私的録音補償金管理協会(SARAH),私的録画補償金管理協会(SARVH)などの権利者側は,現行の補償金制度を維持しつつ,HDD音楽プレーヤを対象機器として追加指定するよう求めた。権利者側の主張は主に3点ある。具体的には,(1)欧米のいくつかの国では,HDD音楽プレーヤをはじめ新たな録音機器への補償金賦課を積極的に進めている,(2)補償金の代替案として提示されているコンテンツ配信への課金については,欧米でも今のところ普及しているとは言えない,(3)私的録音録画補償金の管理は明確に行われており,個々の権利者まで適正に配分している,などである。

 これに対して,メーカーの立場を代表する電子情報技術産業協会(JEITA)などは,代替案としての音楽配信サービスのメリットを強調した。JEITAは4月の小委員会において,現行の補償金制度を2011年をメドに廃止することと,代替制度の検討を開始することを提案していた。今回は,(1)既に国内外で,インターネットでの音楽配信サービスが複数商用化されている,(2)各音楽配信サービスの仕組みを用いれば,配信価格やコピー/転送可能回数などについて,レコード会社などの権利者が個々の楽曲ごとに細かく指定できる,といった点を指摘した。このほか,携帯型音楽プレーヤはデータの保管という機能において,いわゆるUSBメモリなどとほぼ同等であり,現行の補償金制度では「録音用」として対象機器を明確に切り分けることが困難であるとした。

 法制問題小委員会の委員がそれぞれ事前に事務局へ提出した書面では,「賛成・反対の意見がほぼ拮抗」(事務局を務める文化庁 長官官房 著作権課)。実態として多数のHDD音楽プレーヤが楽曲の録音に使われていることや,既に対象機器として指定済みの他のデジタル録音機器との整合性を図ることなどを考慮した賛成意見がみられた。

「音楽プレーヤだから賦課すべき」と理解は示しつつも…

 しかし小委員会での議論では,慎重論が大勢を占めた。多く出たのが,現行の補償金制度の矛盾が拡大するとの懸念である。対象機器を購入する消費者の用途はそれぞれ異なり,必ず私的録音するとは限らない。しかし現行制度では,対象製品の購入者が一律に補償金を支払うよう定めている。HDD音楽プレーヤという,汎用機の性格を帯びた機器を補償金の対象として指定することで,こうした矛盾が拡大することを危惧しているわけだ。

 小委員会の議論では「市販される対象機器の全数に補償金を賦課するという方法では,消費者の理解を得られない」「アナログ時代からデジタル時代への移行期に設けられた制度にとらわれるべきでない。デジタル時代ならではの公平な分配方法を考えるべき」といった意見が出た。

 さらに,「現行の補償金制度への対象機器追加を話し合う以前に,そもそも現行制度は実態にそぐわない。現行制度の是非を再検討すべき」「今後3年~4年で現行の補償金制度の抜本的な見直しをするならば,現時点で対象機器を追加すると見直しの障害になる」といった,現行の補償金制度の廃止や代替制度の検討を含めた,根本的な見直しを求める声も聞かれた。

「補償金制度は不透明」との意見も

 補償金制度の不透明感を危惧する意見も上がった。「消費者からの求めに応じて補償金を返還する制度があるが,実態として機能していない」「補償金は権利者に全額配分されておらず,途中で20%が控除されている。これは制作者の創作意欲をそぐもので疑問が残る」「多くの消費者は補償金制度を知らない。もっと多くの消費者に認知してもらうよう努力すべき」などの声が聞かれた。

 賛成意見としては,「実際の使われ方として私的録音されている以上,補償金の対象機器として指定すべき。各機器の主たる利用目的が何であるかはおおむね判断できるはず」といった声や,「現状では,機器や楽曲ごとのきめ細かな課金制度というのは完全ではない。補償金制度自体が大まかな仕組みであることは承知の上で,現状に応じた処置をするのが適切」といった現実論も聞かれた。

 このほか今回の小委員会では,(1)パソコンのHDDやデータ用CD,DVDなど汎用機器,汎用媒体へ補償金を賦課すること,(2)補償金の対象機器や媒体について,政令で個別に規定している現行制度を改め,新たな機器,媒体の登場時に政令を出すことなく補償金の対象機器に含めること,の2点が議題に上った。これについては,書面による各委員の意見表明,小委員会における議論ともに,慎重な対応を求める声が大半であった。

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