東芝の西田厚聰氏とMicrosoft社のBill Gates氏
東芝の西田厚聰氏とMicrosoft社のBill Gates氏
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 「HD DVDは,プレーヤやレコーダにとどまらない足の長い技術。5年,10年先を見据えて,Microsoft社との連携を決めた」(東芝 取締役 代表執行役社長の西田厚聰氏)。

 東芝と米Microsoft Corp.は,Windows CEを搭載したHD DVDプレーヤの共同開発を検討することで合意した。共同開発が実現した場合,東芝のHD DVD機器開発は,米Intel Corp.製のチップセット(Tech-On!関連記事1)とMicrosoft社のWindows系OSという,パソコン由来のプラットフォームを基にスタートすることになる。

 HD DVDプレーヤの共同開発のほか,HD DVD規格の対話型操作仕様「iHD」(Tech-On!関連記事2)の開発でも両社は協力体制をとる。iHDは,Microsoft社と米The Walt Disney Co.がDVD Forumに提案し,承認を得た仕様である。

 両社の協業体制は,OSや組み込みソフトウエアの分野だけにはとどまらない。HD DVD規格の映像圧縮方式であるMPEG-2/H.264/VC-1の符号化・復号化が可能なDSPの開発に,Microsoft社の技術を活用するもようだ。両社が特許をクロスライセンス(Tech-On!関連記事3)したのは,こうしたハードウエアとソフトウエアが入り組む機器の共同開発を円滑に進めるためだという。「知財を尊重した関係を作り上げる事で,さまざまな形の共同開発体制が容易にとれるようになる。エンジニア同士が抱く『夢』を実現しやすくなる」(Microsoft社 Chairman兼Chief Software ArchitectのBill Gates氏)。

 ただし,HD DVDプレーヤの組み込みソフトウエア開発を両社でどう分担するかなど,より具体的な協業の体制については決まっていない。「まだ双方がテーブルに着いたばかり」(東芝の広報担当者)であり,今後詰めることになるという。東芝としては,米Microsoft社が持つ膨大なソフトウエア資産を活用して,ネットワーク対応やパソコンとの連携機能などを自社のデジタル家電に生かしたい考え。デジタル家電が持つ付加価値をMicrosoft社に取り込まれずに,自社に有利な協業体制が築けるかどうか,これからが正念場と言えそうだ。

 次世代光ディスクの規格争いについて,Gates氏は「我が社は中立の立場。iHDについては,HD DVD機器を含め,幅広い採用を期待している」とコメントするにとどまった。

Longhornベースのノート・パソコンを共同開発

 このほか両社は,従来から緊密な連携をとってきたノート・パソコン分野について,さらに協業体制を強化する。具体的には,次期Windows「Longhorn」をベースにしたノート・パソコンを共同開発するとした。ブート時間を短縮することですぐに音楽や映像を再生できる機能や,連続動作時間を長くできる機能などを実現できると見込む。「これらはOSをはじめソフトウエアだけでは実現できない。ハードウエアのブレークスルーが必須だ」(Microsoft社 Windows Digital Media Division,Corporate Vice PresidentのAmir H. Majidimehr氏)。