ジャストシステムと松下電器産業が争う,いわゆる「一太郎訴訟」の控訴審が2005年6月3日,知的財産高等裁判所で開かれ,裁判の争点や双方の主張の確認などが行われた。

 「一太郎訴訟」は,ジャストシステムのワープロ・ソフト「一太郎」と画像処理ソフト「花子」が特許権を侵害しているとして,松下電器産業が訴訟を提起したもの。東京地方裁判所が2005年2月1日,両ソフトの製造と販売の禁止,および製品在庫の廃棄を命ずる判決を下したが,ジャストシステムはこれを不服として同年2月8日,控訴していた(Tech-On!関連記事1同2)。

 口頭弁論では,ジャストシステム側と松下電器側,それぞれから,この裁判の3つの争点に関する主張が述べられた。争点の1つ目は,松下電器産業の当該特許(特許番号2803236)が,「一太郎」や「花子」のヘルプ・モードのボタンに採用されている仕組みを含んでいるかどうか。ジャストシステムは,当該特許の「第1のアイコンの指定に引き続く第2のアイコンの指定」について,同社が採用している,クリックして選択肢をバルーン表示し,任意の項目をクリックする「クリック・アンド・バルーン・クリック」の形態は含まれていないとし,松下電器は含まれていると主張している。

 争点の2つ目は,当該特許の新規性・進歩性。ジャストシステムは「当該特許はキーボードで同様の技術が既に開発されていたものをアイコンに置き換えただけのもので,新規性がないため,この特許は無効」と主張。松下電器は「キーボードとアイコンは質的に全く異なるもので,当該特許に新規性はある」とする。

 争点の3つ目は,ジャストシステムの間接侵害。一審判決では,松下電器の特許「情報処理装置及び情報処理方法」について,「一太郎」と「花子」は,この「情報処理装置」を構成する部品とみることができ,ジャストシステムはこうした部品の生産・販売をしたことで間接侵害をしたことになるとされた(直接,侵害しているのは,「一太郎」や「花子」をパソコンにインストールしたユーザーということになる)。これについてジャストシステムは,「クリック・アンド・バルーン・クリックはWindows OSが可能にしているもので,当社の間接侵害とは考えられない」とし,松下電器は「OSにそうした機能が含まれているとしても,一太郎や花子をインストールしなければ実行できないのだから,ジャストシステムの間接侵害である」としている。

 裁判は今後,松下電器側が2005年6月20日までにジャストシステムの控訴に対する反論の書面を提出,2005年7月8日頃までにジャストシステム側がそれに対する反論を提出し,2005年7月15日に終決する見込み。