携帯端末向けのDRM(digital rights management)技術である「OMA DRM」をめぐり,米MPEG LA, LLCと携帯電話関連業界の間で巻き起こっている特許ライセンス問題の駆け引きが一層激しくなってきた。OMA DRMは,携帯端末向けサービスの共通仕様を検討する業界団体である米Open Mobile Alliance Ltd.が策定した仕様だ。ところが,OMA DRM技術に関連する特許を保有していると主張する数社が,米MPEG LA, LLCを通じてライセンス料を要求している。

「まだ高い」

 MPEG LA社は2005年1月にライセンス条件を提示したが,携帯電話の関連業界から「高すぎる」として反発され,2005年4月に値下げ案を発表した(Tech-On!関連記事 )。しかし,その値下げ案に対してもまだ不満があると,このほどGSM方式の携帯電話の推進団体である英GSM Association(GSMA)が反対を表明した(発表資料)。

 GSMAによると,反対理由はMPEG LA社の新提案でもロイヤルティーがまだ高すぎること。さらに,ロイヤルティーの支払い義務が誰にあり,それがどの程度の金額なのかといったことを追跡調査する事務作業も複雑で,運用は事実上難しいという。「MPEG LA社の新提案は不適切で,実行不可能なことは明らかだ。我々はMPEG LA社が産業界からのフィードバックに反応し,再びライセンス条件を見直してくれると確信する」と,GSMAのBoard Member兼CEOであるRob Conway氏は言う。

 しかし,MPEG LA社は再度のライセンス条件の見直しは行わないとする。「我々はすべての観点についてGSMAと話し合いを続けている。しかし,現在のロイヤルティー条件は妥当だと思っていることに変わりはない。2005年5月末までには,現在の条件下で正式なライセンスを発行し始めるつもりだ」(MPEG LA社のLicensing and Business Development担当Vice PresidentであるLawrence Horn氏)。

GSMAの次の策は…

 GSMAは以前に,OMA DRM以外の携帯端末向けDRM技術を探すために広く技術提案を募った。そして今までに14の提案を集めている。しかし,その中には「複数の有力な候補があった」ものの「それぞれについて解決が必要な課題がある」とし,現在のところはGSMAにとってOMA DRM以外の選択肢がない状況である。そうした意味では,苦しい交渉を強いられている。

 GSMAの次の一手は,MPEG LA社が管理している「関連特許」の有効性を突くことになりそうだ。MPEG LA社は特許の詳細を公開していないので,本当にOMA DRMに関連する特許なのか,その有効性に疑問があると主張する。MPEG LA社がライセンスの発行を強行すれば,MPEG LA社がOMA DRMに関連していると主張する特許には有効性がないとの異議をGSMAまたは同団体のメンバーが申し立てるもよう。