図 今回の端末。電話ボタンは画面中に表示する。
図 今回の端末。電話ボタンは画面中に表示する。
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 KDDI研究所と東京大学教授の坂村健氏が主催するYRPユビキタス・ネットワーキング研究所(UNL)は,PDA型の携帯電話機「統合PDA端末」を共同開発した。UNLが開発したOS「T-Kernel」で動作する。現在開催中の電子情報通信学会(信学会)の2005年総合大会(大阪大学,2005年3月21日~24日)で発表した。T-Kernel端末として初めて一般的な携帯電話機能を備えた。顔認証や動画の3次元回転処理などができる点も特徴である。

 新端末は,これまでUNLなどが開発してきた情報端末「ユビキタス・コミュニケータ(UC)」に,携帯電話用ドライバ・ソフトウエアを実装し,携帯電話の無線機能を実現するコンパクト・フラッシュ型モジュールを装着したもの。音声通話にcdmaOne(IS-95B),データ通信にCDMA2000 1xEV-DOの無線インタフェースを採用した。電話機の番号ボタンはないが,VGAの液晶パネルに番号ボタンを表示できるため,携帯電話機と同様に利用できる。

 従来のUCにあった無線LANやRFID機能,200万画素のデジタル・カメラ機能などもそのまま備えている。従来のUCの電話機能は,無線LANを利用したVoIP(voice over internet protocol)タイプだった。

 KDDI研究所はUCを「次世代携帯電話向けアプリケーション・ソフトウエア開発用エミュレーション環境」と位置づける。理由は同端末のOSやミドルウエアの仕様がオープンであるため。「一般のPDA製品は非公開の仕様が多い。そうした仕様をメーカーに開示してもらうのには大変な労力が必要になる。仕様が公開されているUCならそうした問題がない」(KDDI研究所)という。

顔認証,視点移動ソフトなどを開発

 KDDI研究所は,同端末向けに開発中のアプリケーション・ソフトウエアもいくつか同学会で発表した。(1)顔認証機能,(2)音声認識による本人認証機能,(3)エラー耐性を強化した移動端末向け地上デジタル放送(1セグ)受信機能,(4)正しく記述されていないHTMLファイルでも表示できるWWWブラウザ機能,(5)3次元画像を任意の視点から再表示する機能,などである。

 (1)の顔認証機能は,部屋の照明の明るさが変動しやすい点やデータの処理能力が限られていることなどを考慮して開発した。約5秒間の認証時間で,他人受入率1%以下の場合の本人棄却率は10%。オムロンが最近発売した顔認証ソフトウエアに比べると認証精度はまだまだ低 い(Tech-On!の関連記事)。「本格的な認証用途でなく,エンターテインメント用なら比較的早く実用化できるかも」(KDDI研究所)という。

 (5)は画像の視点移動を実現するもの。ディスプレイに表示した動画の任意の位置をペンなどでタッチすると,その位置を視点とした眺めになるように映像を3次元的に回転して表示する。「今は上下左右30度ぐらいの回転ができる」(KDDI研究所)という。あらかじめ「奥行きマップ」を作成した動画像に対して利用できる。「将来の携帯電話機に搭載したい」(KDDI研究所)。