顔位置検出機能も備えており,顔位置が中央からある程度ずれていても認識できる
顔位置検出機能も備えており,顔位置が中央からある程度ずれていても認識できる
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 オムロンは,携帯電話機のスタンドアロン環境で動作するユーザー認証用の顔認識ソフトウエアを開発した。携帯電話機のカメラ・モジュールによりユーザーの顔写真を撮影し,あらかじめ電話機内部に登録してあるユーザー情報との照合を経てダイヤル・ロックを解除する。「セキュリティ確保を目的とした,携帯電話機で動作する顔認識ソフトとしては世界初」(オムロン)という。同社はこのソフトウエアを,2005年3月2日~4日に開催される「SECURITY SHOW 2005」に出展する。

 同社は以前から顔認識技術の研究開発に取り組んでおり,パソコンで動作する顔認証ソフトウエアや入退室管理システム向けで商用化の実績がある。携帯電話機の場合は,エンターテインメント用途で顔位置の検出機能を内蔵することはあったが,セキュリティ確保を目的とした顔認証ソフトウエアの組み込みは困難だった。マイクロコントローラの処理性能やメモリ容量に制約があり,一定の認識率を確保しつつスタンドアロン環境で動作させるのが困難だったためである。

 今回開発したソフトウエアでは,顔認証の基本情報となる特徴点を従来の数百カ所から80カ所に減らした。併せて,特徴点の位置関係を記述するベクトル情報の分解能を下げるといった工夫を施した。これにより演算量とメモリの使用量を減らし,携帯電話機で動作できるようにした。認識精度は他人受入率が1%の場合,本人棄却率が1%以下。200MHz動作のARM9コアを使用した場合,処理時間は約1秒である。10万画素程度のカメラ・モジュールで撮影した画像あれば,顔認識に必要な解像度を確保できるという。μITRON,BREW,Linux,Symbian OSで動作する。

 携帯電話機の不正利用を防ぐ手段としては,現在のところ暗証番号がほとんど。生体認証を用いたものとしては,富士通が一部の端末に指紋認証モジュールを実装している程度である。オムロンでは今回の顔認識ソフトウエアの意義について,(1)指紋認証と違って携帯電話機に内蔵されているカメラ・モジュールとマイクロコントローラで動作でき,指紋認証モジュールなどの追加のハードウエアが不要である,(2)非接触型の生体認証方式であるためユーザーが扱いやすい,(3)認証に際して顔を撮影するため,心理的な不正利用の抑止効果が期待できる,といった点を挙げている。