データシートが読みこなせなければ,A-D変換器は扱えない。絶対入力電圧と絶対最大定格の違いや,内部コンデンサの容量の意味するところを理解することなく使い,トラブルに結び付くケースは意外と多いという。そこで前回に引き続き,デートシートの読み方を基本から解説する。(清水 直茂=日経エレクトロニクス)
前回からA-D変換器のデータシートに使う用語を解説しており,今回は全3回のうち2回目となる。第1回は,AC用途のサンプリング特性とAC特性を説明した。今回は引き続き,アナログ入力特性とDC特性を解説する。データシートの例として,AC用途の逐次比較型A-D変換器(「ADS8422」,16ビット,4Mサンプル/秒,米Texas Instruments Inc.(TI社)製)を使う。
アナログ入力特性
安全に使うための基準
A-D変換器への入力信号に関する制限を記載するのがアナログ入力特性である。このアナログ入力特性の一覧を表1に示す。表1には番号が振ってあり,ここでは各項目と対応させて解説する。
(1)Full scale input voltage
アナログ入力信号の入力可能な範囲を示す項目で,一般にアナログ入力レンジ(入力レンジ)と呼ぶ。本稿では,「レンジ」と「範囲」という言葉を使い分けており,入力値と出力値を対応させて範囲を規定する場合は「レンジ」,対応させない場合は単に「範囲」と記す。
入力形式を知るには,表1の試験条件を見る。今回の場合,「+IN-(-IN)」とあり,差動入力形式であることが分かる。つまり,二つの入力端子+INと-INの電位差が入力レンジとなる。