PDPテレビの主体は液晶テレビよりも大画面であるため,より大きな電力を供給できる電源が必要になる。さらに,PDP用電源は高い出力電圧が必要で,かつ2系統の放電回路に電力を供給しなければならない。今回から3回にわたり,PDP用電源への採用が進むハーフブリッジ半波電流共振方式を解説する。(日経エレクトロニクスによる要約)

 フラットパネル・ディスプレイ(FPD)において,液晶テレビに次いで生産量が多いのがPDPテレビである。液晶パネルとPDPの大きな違いはその発光原理にあり,電源の違いとして表れる。液晶パネルは画素自体が発光するわけではなく,パネル裏面に配置された光源からの光の透過量を,液晶分子により調整して色を再現している。そのため,電源には冷陰極蛍光管(CCFL)インバータやLEDドライバなどの駆動用として,比較的低い出力電圧が必要になる。一方,PDPは小さな蛍光灯が無数に敷き詰められているような構造となっていて,画素自体が発光するという特徴を持っている。出力電圧は比較的高い。

 PDPテレビ用電源の構成例を見ると,液晶テレビ用電源との違いがよく分かる。高調波対策のための力率改善(PFC:power factor correction)回路の後段には,出力電圧が200V前後のサステイン放電用電源,出力電圧が70V前後のアドレス放電用電源,チューナーや音声用の低圧出力電源,それとスタンバイ用電源の四つの電源を設けている(図1)。

†サステイン放電=PDPにおいて,各画素のセルを発光させるための放電。放電セル内に封入された希ガスに高圧パルス電圧を印加して放電することにより紫外線が発生する。この紫外線が蛍光体を励起することによって発光する。この発光のための放電がサステイン放電である。PDPは,R(赤)G(緑)B(青)の3色のセルで1画素を構成している。

†アドレス放電=PDPにおいて,発光させたいセルに加える予備放電。PDPでは表示する画像に合わせて発光させるセルや,発光強度を制御している。発光させるセルにはアドレス放電という予備放電を行い,この放電がされたセルのみサステイン放電によって発光する。

図1 PDPテレビ用電源の回路構成例
図1 PDPテレビ用電源の回路構成例
高調波対策用の力率改善(PFC)回路の後段に,電力の大部分を占めるパネル駆動用のサステイン放電用電源とアドレス放電用電源,音声用や制御電源用の低圧出力電源を配置する。待機電力への対策のためにスタンバイ用電源を追加することもある。

 PDPテレビは画面寸法が42型以上の大画面が主体であるため,出力電力は300~600W程度となり,液晶テレビよりも大きな電力が要求される。そのため,大電力出力に適したハーフブリッジ全波電流共振方式が用いられることが多い。ただし,近年は2次側が半波整流,つまり,2次側に交流電力の正負のうち,一方のみの電流が流れるようにしたハーフブリッジ半波電流共振方式が注目されつつある。「民生用スイッチング電源」の項で紹介したようにトランスの構造が簡単になり,2次側整流回路が簡略化されるからだ1)。既に専用コントロールICも開発されている。今回はこのハーフブリッジ半波電流共振方式の特徴と,その応用回路例について説明する。