前回は,アナログICの代表例であるオペアンプを例に,雑音が問題になった事例を取り上げました。今回は,スイッチング電源回路におけるトラブル事例と現場で役立つ技術を紹介します。(連載の目次はこちら

よく発生する問題

 昨今の電子機器には,5Vや3.3Vといったシステム電源だけではなく,電圧の低い多様な電源が求められるようになりました。省電力にするための低電圧化も進んでおり(電流は逆に増加しています),電源自体も効率アップが必須となっています。

 こうしたニーズに応えているのが,スイッチング電源です。多くの機器メーカーでは,設計の自由度を高め最適化しやすくするために,スイッチング電源ICをボードに搭載しています。ところが,「データシート記載の標準回路通りに作ったのに動作しない」とか,「動いてはいるが何かおかしい」といった問い合わせが多数寄せられるようになりました。

 調べてみると,スイッチング電源回路をアナログ回路として考慮しないで実装しているケースが少なくありません。スイッチング電源回路は,数百k~数MHzのスイッチングを行う信号帰還経路を持った,純然たるアナログ回路です。適正な外付け部品を使っても,部品の配置や配線の引き回しなどを考慮しなければ,本来の性能が得られないどころか,まともに動作しないこともあります。

 例えば,(1)回路に頻繁に誤動作が生じ,ひどいときはスイッチング電源ICや外付けFETが壊れる,(2)思うように効率が上がらない,(3)出力が発振する,といった問題が,しばしば現場で発生しています。

原因と対策

 以下では,(1)~(3)のようなスイッチング電源設計時の部品選定や実装にかかわるよくあるトラブルについて,順に解説します。