デジタル機器の競争力を,アナログ技術が左右するようになりました。機器開発者は,アナログ技術を理解し使いこなさなければなりません。そこで必要になるのは,旧来のアナログ技術ではなく,機器全体の視点でデジタル技術と組み合わせて使う“新世代アナログ技術”です。これを体得している技術者がさまざまな企業で求められていますが,日本では慢性的な技術者不足に陥っています。(連載の目次はこちら

 アナログ技術が見直されています。しばらくデジタル技術がエレクトロニクス業界でもてはやされ,アナログ技術は目立たない存在になっていた時期もありました。しかし,もともと電子機器は外部との入出力信号をやりとりして処理する機器ですので,アナログ技術が重要になるのは当たり前のことです。

 普通の電子技術者は,アナログ技術とデジタル技術を別々に学び,アナログ担当とデジタル担当に分かれていることが多いと思います。しかしこれからの電子技術者は,電子機器全体の視点に立って,アナログ技術とデジタル技術の両方を見渡す必要があります。ある機能をアナログで実現するのかデジタルで実現するのかを判断し,両方をうまく併用できる実力があれば,仕事が面白くなるし競争力のある機器を開発することができます。

 その際に駆使するアナログ技術は,従来のアナログ技術とは違ったものになります。詳しくはこれから解説していきますが,それをここでは“新世代アナログ技術”と呼ぶことにします。

 残念なことに,“新世代アナログ技術”を使いこなせる技術者は日本には少ないのが実情です。世界でも豊富にいるわけではありませんが,欧米で先進的な技術者が活躍しています。例えば無線LANなどの無線インタフェースの開発では欧米の企業がしのぎを削っており,日本企業の製品開発力が弱くなっています。その理由の一つが,新世代アナログ技術で日本が出遅れているため,といわれています。

 見方を変えれば,アナログ技術を身に付ければ,日本や世界で活躍できる可能性が高いといえます。電子機器の動作そのものを扱うアナログ技術を追求すれば,ものづくりの楽しさも実感できます。デジタルにかかりっきりで,アナログを食わず嫌いだった人も,ぜひアナログ技術の面白さに触れてみてください。