3Dプリンター 造形技術と装置、活用法の3Dプリンティング最新動向
 

3Dプリンターを使うノウハウの蓄積が差異化競争では不可欠<第2回>

東京大学大学院経済学研究科教授・ものづくり経営研究センター 研究ディレクター 新宅純二郎氏

大石 基之=日経ものづくり
2014/04/25 00:00
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前回、新ものづくり研究会の座長を務めた東京大学大学院経済学研究科教授の新宅純二郎氏は、3Dプリンターの開発においては装置をきちんと押さえること と、出口を広げることが重要と指摘。最終製品を3Dプリンターで造る分野は限られるものの、設計現場の試作には有効であるという見方を示した。そうなると、3Dプリンターの市場は相当大きくなる可能性がある。(聞き手は大石基之=日経ものづくり編集長)

東京大学大学院経済学研究科教授・ものづくり経営研究センター 研究ディレクター 新宅純二郎氏

――先生のお話をうかがっていると、設計現場における試作分野では今後、3Dプリンターが順当に浸透していきそうに感じます。一方で、プロユースにおける量産現場では3Dプリンターの活用はまだまだ先という印象でしょうか。

 大量生産は難しいけど、最終製品の製造に使う例はもうだいぶ出てきています。典型例は、医療系のインプラント(人工骨や人工関節など)です。人間の体の大きさや形状に合わせてカスタマイズし、1個1個造っていくという個別最適用途には、3Dプリンターは絶対向いていますから。あとは、強度や安全性の問題。ここをきちんとクリアできれば、この種の用途は金型で成形するよりも3Dプリンターで製造した方が断然有利です。

 あと、金属系では、戦闘機の部品では既に一部使われ始めていて、航空宇宙分野での活用は広がっていきそうです。こうした分野では、切削加工との競合になりますが、積層造形の3Dプリンターの方が立体をより自由に設計できるという強みがあります。実際、メッシュ構造とか空洞とかを造りやすいので、生体との結合を高めたい人工骨とか、とにかく軽くしたい航空機部品とかに非常に向いていると思います。

――3Dプリンターが最終製品に使われる時代が来ると、設計の仕方だったり設計者の教育だったりが変わる可能性はあるのでしょうか。

 それは大いにあるでしょうね。材料を除去する切削加工や型を使った成形などを中心とした従来方法と、材料を付加していく3Dプリンターとでは全く違いますから。だからといって、これまでの知識が全く必要なくなるかといえば、そうではないと思います。

 例えば、3D-CADが入ってきたときのことを思い出してみてください。設計の3D化によって2D図面を描く必要性がほとんどなくなっても、2D図面の教育を受けていないと、きちんとしたものづくりができません。実際、3D-CADの設計しか知らない人が図面を描くと、ものづくりの現場の人たちの間では、「こんなの造れると思っているのか?」となり、挙げ句には、「どうせ説明しても分からないのだから、コストは高くなるけど、そのまま図面通りに造っちゃえ」みたいなことが起きていました。

――教育がしっかりしていないと、競争力を高めるはずのツールによって返って競争力が落ちることにもなりかねません。

 3Dプリンターは3Dデータを使った自動造形なので、2D図面は必要ないかもしれません。しかし、実際にものを造り込んでいく上でのノウハウはあるはずで、2D図面のときの知識もやはり必要になると思います。

――3Dプリンターの時代にどう人づくりをしていけばよいのか、メーカーも考えていく必要がありますね。

 そうですけど、走りながら考えていくしかないんじゃないかな。とにかく使うところから始めないと、何が大事なのか分かりませんから。そういう意味でも、繰り返しになりますが、日本の中に技術やノウハウを蓄積していくことが重要です。

 ここで少しものづくりの歴史を振り返ってみましょう。3Dプリンターのような新しいデジタル技術が入ってきたことは過去に何度かありました。例えば、工作機械などのNC(数値制御)技術。根幹はファナックが握っていましたが、工作機械のユーザーもメーカーもそれぞれが工夫し、ノウハウをどんどんとプログラムに置き換えていきました。結果、日本の工作機械のユーザー、メーカーが共に強くなりました。

 一方、3D-CADのときにはどうだったか。ある海外製の3D-CADを日本で最初に導入した企業の担当者の話によれば、当初は使い物にならなかったため、海外から技術者を呼んでどんどんと手を入れさせたと言います。しかも、全て日本側のコストで。結果、海外製の3D-CADが非常によくなって、日本製の3D-CADは育ちませんでした。

 果たして、3DプリンターはNCになるのか、3D-CADの二の舞になるのか。岐路に立っています。

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