「Semicon Japan 2011」(2011年12月7~9日に幕張メッセで開催)の展示会で、多くの来訪者を集めた「ミニマルファブ」のブース。ミニマルファブは小さなウエハーと小さな製造装置で、少量のLSIを低コストで作ることを狙う(Tech-On!関連記事)。ミニマルファブ構想の提唱者であり、開発責任者である、産総研(産業技術総合研究所:AIST)の原史朗氏(ナノエレクトロニクス研究部門ミニマルシステムグループ長 ファブシステム研究会 代表)に、LSI設計の視点で話を聞いた。

ブースの前に立つ原史朗氏 Tech\-On!が撮影。
ブースの前に立つ原史朗氏
Tech-On!が撮影。
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問:少量のLSIを低コストで作ると言えば、1枚のウエハーに複数の品種を作るシャトル・サービスが思い浮かぶ。ミニマルファブはシャトル・サービスと競合するのか。

 競合はしない。数量にもよるが、ミニマルファブの方がシャトル・サービスよりも1/10以下のコストでLSIを提供できる。シャトル・サービスは敵ではない。

問:具体的にどの程度の個数のLSIを狙っているのか。

図1●ミニマルファブの狙いどころと数量別コスト コストは製造装置の費用だけでなく、運用など諸々の経費をすべて盛り込んで算出したという。産総研 ファブシステム研究会のデータ。
図1●ミニマルファブの狙いどころと数量別コスト
産総研 ファブシステム研究会のデータ。
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 3段階で考えている。まずは、100個以下の市場を狙う(図1参照)。ミニマルファブを使えば、たった1個のチップでも100万円/cm2の低価格での提供が可能だと考えている。このときは、試作や超少量生産がターゲットである。

 それが軌道に乗れば、100個から1万個の領域を狙う。1cm2あたりのチップ価格は1万円台に下がる。これならば、家電製品でも搭載してもらえるだろう。また、産業機器では生涯生産量が1000個くらいしかないLSIがかなりある。これまでの装置だとそんなに少なくは作れないから、不要なチップは死蔵され、時期が来ると廃棄していた。ミニマルファブならば、そんなことにはならない。

問:微細化には対応できるのか。

 今回実演した露光装置は、DLP(digital light processing)を使った直描方式で、この方式ならば250nmや180nmまではいけるだろう。それ以下は電子ビーム(EB)を使った直描を考えている。現在、半導体産業で使っている大きな口径のウエハーではEB直描方式では時間がかかりすぎて、現実的ではない。一方、ミニマルファブで使う12~13mm(0.5インチ)のウエハーならば15秒で処理が終わり、他の製造装置と足並みをそろえて運用できる。

問:今回の実演では、EB露光装置は見かけなかったが、着手しているのか。

 まだだ。ただし、顧客が付くことが分かれば、すぐにでも取り掛かれる状態にはある。