図1 設立者でCEOのBarry氏
図1 設立者でCEOのBarry氏
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図2 ネットワーク構成
図2 ネットワーク構成
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図3 標準規格と用途の関係
図3 標準規格と用途の関係
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図4 高速な通信・放送規格における精度要求
図4 高速な通信・放送規格における精度要求
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図5 Brilliant社が示した商品の同期精度
図5 Brilliant社が示した商品の同期精度
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 自らの腕と技術を元にベンチャーを興し,数十億円の収益を確立したら売却。再度,腕と技術を生かして,前とは異なる用途・市場を狙う会社を設立し,一定の成功を収めたら,それも売却する。こうした起業のプロ中のプロは,シリアル・アントレプレナーと呼ばれている。シリコンバレーに多く住む。

 そのうちの一人,Charles Barry氏が設立した米Brilliant Telecommunications, Inc.が好調だ(図1)。Brilliant社は,タイムサーバーと呼ばれる商品を開発している。

 タイムサーバーは,ルータや基地局などの電子機器間のクロックをそろえるために使うもの。通信品質を高められるほか,通信の容量拡大などに向けた設備投資を必要最小限に抑えることに寄与する(図2)。

 Brilliant社は詳細な収益額や顧客名の詳細を公表しないが,米国の通信事業者のみならず,Vodafoneグループや日本,台湾の事業者も顧客にしつつあるようだ。日本,台湾については,フェムトセルと呼ばれるカバー・エリアが極めて小さな基地局の試験運用に用いられている。Brilliant社の社員数は50名ほどである。

 設立者でPresident and CEOのBarry氏に,同社の商品が実現した同期精度などを聞いた。

―― 通信機器の同期には標準規格が存在する。NTP(network time protocol)やIEEE 1588(PTP:precision time protocol)だ(図3)。これらを実装すれば,誰もがタイムサーバーを一応作れる。加えて米Symmetricom, Inc.のように,Brilliant社と競合する商品を市場投入している企業もある。Brilliant社の優位性は何なのか。

Barry氏  確かにプロトコルはオープンだが,その使いこなしによって商品は差異化できる。「使いこなし」のアルゴリズムを述べることはできないが,高速な通信・放送規格がどの程度の精度を要求しており,我々がどう応えているのかというデータなら見せられる。

 図4にあるように,WiMAXやDVB-Hでは,±1μ秒以内の同期精度が求められている。これに対し,当社商品はそれを楽に下回る精度が出せている(図5)。ライバル3社の商品における同期精度も同様に測定したところ,我々の商品が最も同期精度が高かった。

―― 同期精度を高めるアルゴリズムを,なぜ開発できたのか。

Barry氏  私が同期技術にこだわりと経験を持っているからだろう。タイムサーバーの用途は,ネットワーク・ゲームや株式売買,そして放送,通信といった具合に広がり続けた。必要な同期精度も上がり続けた。私を含めた当社の中核メンバーは,その時々に市場が求めるソリューションを提供してきた。

 こうした経験があるから,次に何がホットになるのか,素直に分かる。例えば今,先進国ではフェムトセルが,新興国では通信のバックボーンのIP化がホットだが,そうなることは分かりきっていた。あと私がやることはシンプル。メンバー(組織)をそろえて,粛々と必要な技術を開発するのさ。