欧州におけるデジタル放送の標準化団体DVB(Digital Video Broadcasting Project)が策定した携帯電話機に向けた地上デジタル放送の仕様。DVBが策定した固定受信向けの地上デジタル放送の仕様であるDVB-T(変調方式はOFDM)をベースに,チューナーの低消費電力化を図ったもの。受信回路を100mW以下に抑えることを目標に仕様の策定が行われた。

 DVB-Hの特徴は,受信回路の低消費電力化に向けて「タイム・スライス」と「バースト送信」の考え方を導入したことにある。DVB-Hは,時分割で番組を多重送信するとともに,受信回路をきめ細かくオン/オフする。DVB-Tの仕様をベースにしながら携帯端末の低消費電力化を図るこの手法をタイム・スライシングと呼んでいる。放送局は,映像を含む携帯電話向けマルチメディア・データをMPEG-2トランスポート・ストリームに多重化する際,番組ごとに広い帯域を一時的に占有してバースト的に送信する。複数番組を多重する場合には,占有する時間を数百秒~数秒ずらす。DVB-H対応の受信端末は,所望の信号が到達しているときだけ受信回路を動作させる。受信回路のオン/オフのタイミングを決めるために,トランスポート・ストリームには次に所望のチャンネルの信号が到達するタイミングに関する情報も一緒に送信する。

DVB-Hの概要
図 DVB-Hの概要
2004年2月2日号より抜粋)