「大画面」や「高画質」といった数値競争や横並びと決別し,自社の得意技術を深めて,製品で消費者が得る体験や驚きを重視する─。「CEATEC JAPAN 2007」で鮮明になったのは家電メーカー各社の姿勢の変化である。テレビとしての存在感を消すほどの薄型化を進めるために,有機ELを選んだソニーに対し,液晶技術のブラッシュアップで対抗したシャープや日立の姿がそれを象徴する。消費者と機器の接点を,自社技術でどう演出するかに焦点は移った。(CEATEC特別取材班)

1.テレビ
有機ELも液晶も「薄さ」をアピール,製品開発の軸足移る

もはや単なる「大画面・高画質」では消費者が納得しない─。テレビ・メーカー各社のブースでは,横並びの技術競争から脱却し,自社の個性を技術でどう実現するかに力点が置かれた。有機ELという新技術を最大限にアピールしたソニー,液晶技術を徹底追求したシャープや日本ビクター,あらゆるディスプレイ技術を総動員した日立と,各社の個性がはっきりした。

2.サービス
「健康」「行動支援」を旗印に,家電独特の機能をネットで

インターネットのサービスを家電にどう取り込むか。今回のCEATECでは,数年来の課題を解決する現実的な提案が各社から出てきた。従来のようにパソコン向けのサービスをそのまま利用したり,パソコンとの連携を前提にしたりするのではなく,家電機器だけでネット連携のメリットを享受できるような提案が主流となった。

3.ユーザー・インタフェース
アイデアから実用へ,認識技術の浸透始まる

製品が与える新しい消費者の体験を重視する─。各社の方針転換が端的に表れたのがユーザー・インタフェースに関連する展示の増加だろう。地上アナログ放送の停波まで4年を切り,テレビなどの入力ソースのすべてがデジタル化される時代が目前になった。ネット化,フラット化が進む機器のユーザー・インタフェースを,抜本的に改革するチャンスととらえる姿勢が伝わってくる。

4.AV記録/再生機器
H.264が映像圧縮の主役に,ただし互換性には不安も

H.264時代」が,今回のCEATECで本格的に幕を開けた。HDTV画像のリアルタイム圧縮に対応するH.264符号化LSIを,さまざまな用途に応用する展示が目に付いた。各社横並びではなく,自社の判断を優先する動きがここでも見られた。この結果,異機種間の「互換性」に関する混乱が,助長される可能性がある。

5.電源・電池
次世代充電技術が目白押し,光,非接触,急速,燃料電池も

「いつでもどこでも」に追随する──。電源・電池に関しては,携帯機器などへの利用を狙った技術の展示が目に付いた。充電容量の大きさといった単純な数値競争ではなく,急速充電特性のような優位性を製品の用途や使い勝手にどう生かすかが,競争軸になりつつある。これに伴い,特徴的な技術を持つ他のメーカーとの共同開発や買収などを含む合従連衡も活発化している。

6.電子部品
機器の付加価値,センサが担う

今回のCEATECに登場した数々の部品の中でも特に目を引いたのが,入力系デバイスに代表されるセンサである。ユーザー・インタフェースの良しあしが機器の付加価値を大きく左右するようになってきた。こうした流れをとらえ,多くのLSIメーカーや部品メーカーが,入力を担うセンサなどの展示に力を入れた。これに比べると,プロセサやメモリといった処理/記憶系デバイスの進歩は成熟しつつある。

7.通信
コンテンツ共有はDLNAで決まり,電力線ネットが普及期へ

ここ数年来,徐々に進んできた家電のネット対応や機器連携がいよいよ花開く――。今回のCEATECの展示はそれを強く実感させた。ネットワーク経由の機器連携のために整備されてきたDLNAや,電力線通信など家庭内ネットで使える物理層の技術が普及期を迎え,その使いこなしの多様さを競う展示が目に付いたからだ。無線を使った通信技術にも新たな展開があった。