日本の燃料電池は,これまで燃料電池車と家庭用コジェネレーション・システム,携帯電話機という三つの大きな市場にターゲットを絞って開発を進めてきた。これに対して,海外メーカーの多くは,強い需要のあるニッチな市場で事業を立ち上げ,それを世界中に展開することで数量を確保しながら低コスト化を進めていくという戦略を取っているようにみえる。

 2006年11月13~17日に米国ホノルルで開催された「2006 Fuel Cell Seminar」では,その講演や展示会から軍事用途をはじめ,携帯電話基地局のバックアップ電源やフォークリフト用電源,ポータブル電源など,さまざまな分野で燃料電池市場が立ち上がりつつあることがうかがえた。

 これまで燃料電池の開発を引っ張ってきたのは,間違いなく自動車だ。それも,本当はもっと早く実用化するはずだった。そのため,材料メーカーや部材メーカーをはじめ,多くのメーカーが自社の研究開発費を自動車用燃料電池の開発に振り向けて事業化を狙ってきた。実際,経済産業省が2001年に示した「燃料電池実用化戦略研究会報告」では,燃料電池車を2010年に5万台,2020年に500万台導入する目標を掲げていたほどだ。