デジタル・カメラ市場が新たな競争の段階に入る。もはや技術力では日本も海外も大差ない。今後数年間の勝負に生き残れるかどうかが「カメラ王国」の存続を決定づける。

<戦略>
日本家電「最後の砦」
デジタル・カメラの勝ち残り策

 日本のカメラ・メーカーが,瀬戸際に立たされている。

 これまで日本メーカーはカメラ市場で我が世の春を謳歌してきた。1970年代に機械・光学技術の固まりだったカメラに電子技術を持ち込んでカメラを大衆化。ドイツ勢から「王位」を完全に奪った。デジタルの時代になってもその座は揺るがなかった。パソコンの周辺機器だったデジタル・カメラに銀塩カメラをしのぐ性能を与え,一眼レフ機の領域までデジタル一色に塗り替えたのは日本メーカーの功績である。

 しかし今,その牙城を脅かす勢力が急速に台頭している。台湾や韓国などをはじめとする海外勢である。海外勢の武器は,どのメーカーでも入手できる市販部品を活用した安価で素早いモノづくりだ。

<H.264 ビデオ・カメラを分解>
短期開発に徹したソニー
実装品質には疑問も

予定発売日を繰り上げて販売が始まったソニーのビデオ・カメラ「HDR-UX1」。直径8cmのDVDに1080iのHDTV動画を記録できる業界初の製品である。本誌は機器メーカーや半導体メーカーの技術者の協力を得て,この製品を分解・分析した。そこから透けて見えたのは,多大な開発コストを掛けてでも早期の市場投入を優先したソニーの姿勢である。業界に先駆けて新製品を投入することでビデオ・カメラ市場での地位をより強固にする狙いだろう。従来機種の部品を流用するなど戦略的に製品を開発している様子もうかがえる。一方,将来の火種になりかねない品質上の問題も浮かび上がった。

<手段>
市販部品が
先端機能を安価に

 デジタル・カメラの作り方が変わる。撮像素子にレンズ・ユニット,信号処理LSIなどデジタル・カメラを構成する主要部品で,最先端の機能を実現する品種が誰でも買える市販部品として市場に出回るようになるからだ。数百万画素の静止画撮影とHDTV動画の撮影を両立できるCMOSセンサ,ガラス非球面レンズを組み込んだレンズ・ユニット,デジタル一眼レフ・カメラの光学ファインダーを置き換え可能な電子ビュー・ファインダー(EVF:electronic view finder),HDTV動画を符号化できるH.264/MPEG-4 AVC(以下,H.264)方式のエンコーダLSIなどが,続々と入手可能になりそうだ。

<Interview>CMOSセンサ,ナンバーワン宣言―
勝利への確信
米Micron Technology, Inc.
Chairman of the Board,CEO Steven R. Appleton 氏