「事故ゼロ」を目指して

事例1:Dell社,Apple社のLiイオン2次電池
数件の事故が数百万の回収に

 相次ぐ発火事故を受け,590万個という大規模リコールの対象になったLiイオン2次電池モジュール。この一件は,製品安全にかかわる事故が瞬時にネットに公開される現代では,数件の事故が莫大な出費を要する製品回収につながることを如実に示した。

事例2:パロマ工業のガス瞬間湯沸かし器
改造を許す構造自体が欠陥

 経済産業省は,パロマ工業に対して消費生活用製品安全法第82条に基づく緊急命令を2006年8月28日に発動した。同社が1980年から1987年にかけて合計26万台製造した半密閉式ガス瞬間湯沸かし器7機種について,安全性の欠陥があるとして,製品の点検・回収を求めたものである。

事例3:松下電器産業のFF式暖房機
長期利用が招いた負の連鎖

 「事故機では,2次エアホース以外にも劣化している部品がいくつかあった。事故直後に検分した松下電器が,複合的な原因を疑ったとしても無理はない」――。経済産業省からの依頼で松下電器産業のFF式石油温風暖房機(FF式暖房機)が2005年に起こしたCO中毒事故の原因を調査した,製品評価技術基盤機構(NITE)生活福祉センター製品安全技術課専門官の嶋津勝美氏はこう証言する。

<現状分析>
始まる家電リコール制度
製品安全の内容が問われる

 製品事故の多発に業を煮やした経済産業省は,製品安全に向けて管理体制の強化を進めている。目指すのは法的拘束力がある家電リコール制度の導入である。その背景にはユーザー意識の変化がある。製造物責任(PL)法施行後10年以上を経て,メーカーに対するユーザーの視線は厳しさを増している。エレクトロニクス・メーカーは今後,家電リコール制度を前提に製品安全体制を構築する必要がある。

<今後の対策>
耐用年数を超えて安全を確保
時代の先行く取り組みがカギ

 消費者や行政が求める製品安全の基準は,今後ますます厳しくなる。使用者に危害を及ぼす事故を起こした企業は,PL法による賠償にとどまらず,事業の存続が危ぶまれる可能性すら出てくる。消費者の信頼を得るには,対症療法的に対策を継ぎ足すのではなく,「事故ゼロ」を追求した時代の先を行く安全対策が求められる。