2006年6月中旬,大阪。あるホテルで開催された会議の最中に,米Dell Inc.製のノート・パソコンが突如発火,炎上した。この事故が,590万個のLiイオン2次電池モジュールを約200億円掛けて回収するという大規模リコールにつながった。

 回収の対象となったのは,いずれもソニーエナジー・デバイスの福島工場で生産された電池セルを組み込んだモジュールだった。異常発熱や発火を防ぐ安全機構を何重にも施しているはずのLiイオン2次電池に,一体何が起きたのか――。

 ソニーによれば,今回の欠陥の原因は「電池セルの製造工程で,微小な金属粉がセルの特定部位にまれに混入したこと」という。この金属粉が正極部に付着すると,充放電を繰り返すうちに金属イオンとなって負極部で析出し,やがて正極と負極を隔てるセパレータを破って内部短絡させることがある。あるいは,充放電の繰り返しで電極材料が膨張し,金属粉と接触して短絡することもある。