これまで解説してきた量子暗号は,量子の性質を使って安全に送受信間で鍵を共有する「量子鍵交換」の技術であった。連載の最終回に当たる今回は2000年に提案された量子暗号「Y-00」を紹介する。Y-00は量子雑音と呼ばれる性質を使って,通信データそのものを安全に伝える。 (山田 剛良=本誌)

石井 茂
日経BP社 主任編集委員

 暗号方式には「共通鍵(秘密鍵)方式」と「公開鍵方式」の2種類がある。コンピュータ・ネットワークでセキュリティーを確保するために,両者は組み合わせて使われている。共通鍵暗号は送受信側で共通の暗号鍵を共有する暗号手法である。同じ鍵を使って送信側が暗号化し,受信側で復号化する。共通鍵暗号の技術はさらにブロック暗号とストリーム暗号の二つに分かれる。