安定動作には「発振余裕度」の確保が必須

水晶振動子は多くの電子機器で,小型で高い精度のクロック信号を提供する素子として用いられている。ただし,安定的に動作させるには発振回路が一定の条件を満たす必要がある。今回は,水晶振動子の動作が不安定になったトラブルの事例から,その原因と解決策について解説する。 (野澤 哲生=本誌)

坂井 義幸
エプソントヨコム 営業統括部 新市場マーケティング部 主任

 数MHz~数百MHzの発振周波数を持つATカット型の水晶振動子は,多くの電子機器の中で「頭脳」であるLSIにクロックという「血液」を提供する「心臓」の役割を果たしている。この心臓に不整脈が起これば,その影響はたちまち機器の不具合となって現れる。例えば,水晶振動子をパソコンのマイクロプロセサの動作に用いている場合はパソコンが起動すらしなくなることがある。携帯電話機で無線用の基準クロックに用いている場合は無線回路が動かないので着信や通話ができなくなる。