東京工業大学特命教授で先進エネルギー国際研究センター長、東京都市大学教授の柏木孝夫氏
東京工業大学特命教授で先進エネルギー国際研究センター長、東京都市大学教授の柏木孝夫氏
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LED照明シンポジウム2014「未来予想図―ニッポン・あかりの未来―」の基調講演に登壇する柏木孝夫氏(東京工業大学特命教授、先進エネルギー国際研究センター長、東京都市大学教授)に、スマートシティ構想の中でLEDがどのような役割を果たしていくのかを聞くインタビュー(シンポジウムの詳細はこちら)。前編では柏木氏から、照明がLEDを手に入れることで“デジタル家電”化し、スマートハウスを構成する重要な要素になるとうかがいました(前編へのリンク)。後編では、再生可能エネルギーの活用方法が話題に挙がります。再生可能エネルギーを加えた新しい電力需給構造システムを構築する上で、やはりここでもスマートハウスが鍵を握るとのことです。
(聞き手は、野田高季=LED照明推進協議会 事務局長)


スマートシティのあかりとなるLED

――エネルギーの安定供給では再生可能エネルギーがポイントとなるのでしょうか?

柏木氏 世界中のビジネスや暮らしを支える電気の中で大きな割合を占める石油ですが、石油確認埋蔵量は富士山をカップにしたとすると、0.8杯分の容量しかありません。中国とインドを合わせた人口24億人の人たちが快適な電化生活を始めたら、残り少ない石油はあっという間に消費される。石油に頼らないエネルギーの安定供給は世界的な急務となっています。

 では、日本のエネルギー事情はどうでしょうか?東京電力福島第一原子力発電所の事故のあと、電力の安定供給の観点から太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーが注目を集めています。しかし、再生可能エネルギーには不安定性という克服すべき弱点があります。例えば太陽光発電は雨の日は発電できない。しかし電力を利用する需要は変わらずあるわけです。

――再生可能エネルギーの不安定性を取り除くことはできるのでしょうか?

柏木氏 現在、様々な取り組みが進められています。例えば、熱源より電力と熱を生産し供給するコージェネレーションシステムや、ガスから電気をつくる家庭用燃料電池を組み合わせて利用するといったことも重要です。またデジタル家電の自動制御により需要を上手くコントロールすることも不安定性の回避につながります。

 太陽光発電でつくった電力を蓄電することも大切ですね。太陽光発電が多くの電力を発電しているときに売電して、電力が大量に送電線に流れているときは電池に蓄電する。市場に合わせて電力を管理することが重要です。スマートメーターは電力使用量に加えて電力を消費する側が逆に電力系統へ電気を送り出す逆潮流値も把握できます。

――従来とは電力需給構造システムが大きく変わりますね。

柏木氏 従来は、電力供給量により電力の需給バランスを一致させていましたが、電力の自由化時代ではデマンド(需要)サイドで需要量を変動させ、電力の需給バランスを一致させるデマンドレスポンスの確立が求められます。つまり、供給側と受給側が協力しあって電力のバランスを維持していくわけです。

 電力の自由化ではエネルギーのデマンドサイドのあり方が問われます。スマートメーター、HEMS、デジタル家電が一体となったスマートハウスでは、デマンドサイドが無理せずデマンドレスポンスを実現できます。ここにスマートハウスの存在意義がある。スマートハウスは今後のエネルギー・住宅の方向性を示しています。

――新しい電力需給構造システムの鍵を握るのがスマートハウスだと。

柏木氏 スマートハウスで再生可能エネルギーを活用しながらデマンドレスポンスを実現し、原子力発電をはじめベースロードの電源による電力供給の安定化を図っていく。これによりピークをださない電力需給構造システムが実現する。ピーク時に対応するために備えていた過剰な大規模の電源設備も必要なくなります。

出典:柏木研究室
出典:柏木研究室
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