このシリーズでは、中部電気保安協会の本店 保安部 太陽光プロジェクトチームによる、太陽光発電システムのトラブル事例や、それらのトラブルへの対応策、所属する電気主任技術者にどのように助言しているのかについて紹介する。同チームがまとめたトラブル事例集を基に、同チームの寄稿によって構成している。

 今回は、太陽光パネルを接続する配線の損傷によって、漏電してしまう例を紹介します。太陽光発電所の発電開始前に実施する竣工検査の項目の一つである、絶縁抵抗測定によって発見したものです。

 太陽光パネルを接続する配線には、絶縁電線が使われます。電気が流れる心線(導体)を、絶縁性能が高い樹脂などの絶縁物で覆ったものです。この絶縁物によって、例えば、絶縁電線が架台に触れている状態であっても、架台などに電流が流れることを防いでいます。

 しかし、この絶縁物の状態が変化し、絶縁層の被覆が劣化したり、損傷した場合には、電線が触れている架台などを介して、電流が大地へ流れてしまう場合があります。この状態を、漏電と呼びます。

 第14回で紹介した通り、太陽光パネルの出力からパワーコンディショナー(PCS)への入力までの直流側では、日射がなくならない限り、発電システム内で事故や故障といったトラブルを生じた場所に、電気が流れ続けるのをストップできません。

 漏電もこうした直流側のトラブルの一つで、電気が流れ続けてしまうため、絶縁抵抗の確認は、重要な試験項目となっています。

 絶縁抵抗の確認では、電気設備の技術基準(省令第58条)によって定められている規定値である、0.4MΩ以上の絶縁性能があるかどうかを確認します。