このシリーズでは、中部電気保安協会の本店 保安部 太陽光プロジェクトチームによる、太陽光発電システムのトラブル事例や、それらのトラブルへの対応策、所属する電気主任技術者にどのように助言しているのかについて紹介する。同チームがまとめたトラブル事例集を基に、同チームの寄稿によって構成している。

 今回は、集電箱とパワーコンディショナー(PCS)を接続する幹線に、誤って設計よりも細い電線(配線ケーブル)を使って施工されていた例を紹介します。

 電線の太さの誤りに関するトラブルについては、第12回で、PCSと昇圧設備(キュービクル)を接続する、交流の幹線の電線の太さ不足を発見した例を示しました。今回紹介するのは、集電箱とPCSを接続する、直流の幹線で生じたものです。

 太陽光発電設備は、稼働前に「竣工検査」を実施します。中部電気保安協会が竣工検査を担う場合、事前に入手した施工図面を基に、太陽光発電システム内の回路に流れる電流を調べ、電線(配線ケーブル)の種類、太さが適しているのかどうか、さらに、現場で施工図面通りに施工されているかを、外観点検によって確認しています。

 今回の例では、竣工検査の際、PCSに接続していた2台の集電箱からの直流幹線が、いずれも設計よりも細い電線が使われているように感じ、施工図面と照合しました。すると、どちらの電線も、太さ200mm2と指定しているにも関わらず、実際には、太さ60mm2の電線を使って施工されていました。

 二つの集電箱からPCSを接続する電線に流れる最大電流は、それぞれ350A、359Aとなっていました。いずれも、太さ60mm2の電線の許容電流である225Aを大きく上回っています()。

図●集電箱とパワコンの間の直流の電線の許容電流が不足
最大359Aの電流が流れる幹線で、許容電流225Aの電線を誤って接続(出所:中部電気保安協会)
[画像のクリックで拡大表示]

 太さが細い電線を使い、誤って施工していた原因は、第12回と同じように、施工業者が修正前の施工図面に基づいて施工したことにありました。その修正前の図面では、太さ60mm2の電線を指定していました。このため、後日、最終的な施工図面通り、太さ200mm2の電線に変更してもらいました。

 電線には、小さいながら電気抵抗があり、電流が流れると、抵抗によって発熱し、電気エネルギーの一部が、熱損失になります。この発熱量が大きくなると、最悪の場合、電線を被覆している樹脂が焼損してしまい、短絡などの原因となるため、安全に流せる最大電流(許容電流)が決められています。