アジャイル開発に適したFileMakerをシステム基盤に採用

 長寿バイオバンクでは、認知症や加齢性運動器疾患など老年病関連の生体試料を5年以内に約1万件収集することを目標にしている。様々な生体試料種別のサンプルと、それにひも付いた臨床情報を一元的に管理していくためには、非常に大きなデータベースシステムが必要になってくる。

 そのバイオバンク情報管理システムの構築は各ナショナルセンターに任されており、国立長寿医療研究センターはFileMakerをプラットフォームとして採用。電子カルテシステムと連携した「BioBank Information System」(BIS)を、FileMakerによる医療系システム開発で実績のあるジュッポーグループと共同で構築した。

 過去にない情報管理システム構築における大きな課題は、既存のシステムを利用して構築するのは難しく、要件仕様書を作成してメーカーに新規開発を依頼した場合、莫大なコストと時間がかかる可能性があることであった。また、バイオバンク業務のワークフローが完全に固まっていない状態で、仕様の作成・変更を繰り返しながら開発する必要があった。

バイオバンク情報管理ユニット長の
渡辺浩氏

 「開発の手戻りが頻発する可能性があり、ウォーターフォール型の開発手法では開発プロジェクトが破綻する危険性がありました。プロトタイプを作成し、現場で検証しながら開発を進められ、ワークフロー変更に伴う仕様変更にもすぐに対応して実装するためには、アジャイル型の開発手法が最適と判断しました。FileMakerを採用した理由は、現場のスタッフが開発に関わり、実装とテストを反復しながら開発を進められるアジャイル開発が可能であることです」。臨床研究推進部医療情報室長であり、バイオバンク情報管理ユニット長を務める渡辺浩氏は、システム基盤にFileMakerを選んだ背景をこう説明する。

 また、国立長寿医療研究センターでは高齢者総合機能評価(CGA)向けシステムをFileMakerで開発した経験もあったことに加え(関連記事はこちら)、FileMakerが様々なOS環境に対応できること、FileMaker Goを利用してiPhoneやiPadなどモバイルデバイスにも対応できる点も選定した動機だったと指摘する。