縮小傾向が続く日本市場。だが、米Analog Devices社は日本が魅力的だとする(前編はこちら)。新技術を生み出す役割を担っているとみているからだ。だが、新技術を製品やサービスに結びつけるのに時間がかかりすぎるとの指摘もある。アナログ・デバイセズで代表取締役社長を務める馬渡修氏へのインタビューの後編では、新技術を持つ日本の顧客とどのように関わっていくのかを聞いた。(聞き手は、大久保 聡=日経エレクトロニクス編集長)

――製品開発のスピードに問題があるということですね。優れた技術があり、試作品までこぎ着けているのに、製品として市場に出せない、あるいは好機を逸してしまう。

 そうです。技術はあるのに、技術からマーケティングをしてすぐ製品に仕立て、世界市場を取るコンセプトを描くまでのスピードが、米国や欧州、韓国、中国に比べると日本はどの国よりも遅いというのが実感です。とにかく、時間がかかるんです。さらに、製品化やマーケティングの決定権がどこにあるのかも見えにくい。

 こうした技術を製品につなげるところで、我々は貢献できると考えています。ですがその前に、製品開発のスピードが遅いことをまず気付いてもらいわないと、我々の協力には限界がありますね。

――御社とタイアップすることで顧客の製品展開が進んだ例を挙げてください。


 例えば、成功事例にデジタル・カメラがあります。製品開発の最初の段階から、センサが出力する映像信号を処理するDSPについて顧客と協力して開発を進めました。センサ・メーカーとも一緒に開発しましたね。そこで開発したDSPはその後ブラッシュアップし、当社が世界展開したところ、かなりの世界シェアを取れました。

 日本のカメラ・メーカーは、継続した競争力を維持できています。ミラーレス・カメラやハイエンド機など、我々は顧客と一緒にマーケットをつくったというイメージを持っています。

 今後期待する機器には、スマートメーターがあります。スマートメーターの製品開発に当たっては、前述のデジタル・カメラの開発に近い形になる気がします。我々が持っている、スマートメーターに活用できそうな技術は、世界的に先頭を走っていると思っていますので。