2011年度(2010年11月~2011年10月)の売上高が過去最高を記録した米Analog Devices社。2005~2011年度の6年間で売上高は47%も増えたという。それを支えたのが、産業・計測機器や自動車、ヘルスケアの3分野である。2012年度以降もこれらの分野が成長エンジンになるとみる。この3分野は、日本企業も成長分野と位置付ける。Analog Devices社は、狙いを同じくする日本の顧客とどのように関わっていこうとしているのか。同社の日本法人であるアナログ・デバイセズで代表取締役社長を務める馬渡修氏に、戦略を聞いた。(聞き手は、大久保 聡=日経エレクトロニクス編集長)

――最近の市場環境はどのようになっていますか。

馬渡修氏
馬渡修氏
アナログ・デバイセズ
代表取締役社長

 年初と比較すると、正直言って思ったよりも楽観視できない感じです。期待値通りのところもありますが、在庫がまだ整理しきれない業種がいくつかあり、期待値ほど上がってこない市場もあります。

 これは、日本市場に限らず、世界市場でいえることです。いろいろな背景がありますが、やはり中国市場が当初期待していたよりも芳しくないことが影響していると思います。最近、少しずつデータが明らかになっていますが、中国自体のGDPの伸び、住宅の着工、それから輸出入の金額など、状況がクリアになればなるほど、中国市場の状況はやや不透明になってきました。

 逆に期待値以上に良かったのが、ASEAN(東南アジア諸国連合)地域などの中国近辺のアジアですね。中国の人件費が上昇していることがあり、中国以外で追加投資する企業も出てきました。

 一方、やはり欧州の市況は相変わらずよくないですね。我々もいろいろなビジネス・レビューの情報が入ってくるのですが、欧州が最も良くないですし、今後も高い期待は抱けないかもしれません。米国市場の状況は堅調ですね。日本市場では、中国向けなど、輸出中心の顧客の状況はまだ芳しくないものの、内需向けは順調といえるでしょう。

――産業分野ごとにみると、どこが堅調ですか。

 一番堅調で伸びているのは、世界市場、日本市場を問わず自動車関係ですね。ここは予測通り、状況によっては予測以上に伸びています。2桁成長を期待しています。

 日本において、当社の製品を直接購入するティア1(電装メーカー)は、系列の自動車メーカー向け以外に車載機器を展開することが今後さらに増えるでしょう。この動きはアグレッシブに進んでおり、当社にとってもプラスです。