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HOMEクルマGT-Rの開発 > 第6回:実力の萌芽(下)

GT-Rの開発

第6回:実力の萌芽(下)

  • 高野 敦=日経ものづくり
  • 2012/04/26 00:00
  • 1/3ページ

【前回より続く】

計測システムで目標を定量化

 目指すべきは,ユニット全体が高いレベルで調和しているクルマ。それを実現するための人づくりが始まろうとしていた。この人づくりを通じて水野はメンバーに何を期待していたのか。これを間接的に表現したのが「開発の舞台はフランス料理店の厨房。そして自分は総料理長」という水野の言葉だ。

 フランス料理店でコース料理の全容を事前に把握しているのは,総料理長だけ。同様に,GT-Rの開発において企画の全体像を考え,そして決定していくのは,商品企画の総責任者(CPS)の水野だけである。

 元来,水野は合議制を信用しない。企画の部分に関しては,民主主義的な手続きを踏んだからといって,クルマの質が上がるわけではない。むしろ,下がる恐れすらもある。「何を造るか」は,責任を持って自分が決定し,トップダウンで伝える。それが“総料理長”たる水野の流儀だ。

 裏を返せば,自分が造りたいものを,目標や指示という形で正確に伝達できなければ,責任者は務まらない。なぜなら,フランス料理店では総料理長が実際には細かい調理作業に手を下さないように,クルマの開発で総責任者の水野が手を動かす場面はそれほどないからだ。自分のアイデアを普遍的に理解可能な形で表現できなければ,チームは全く動けないのである。

 故に,水野がメンバーに求めるのは「目標や指示を理解した上で,それを遂行できる能力」となる。ただし,これは単に言われたことだけをこなすのとは違う。それだけでは「組み合わせ」で終わってしまうからだ。擦り合わせである以上,言われたことだけでなく,プラスαが必要となる。そのプラスαとは,ユニットを単純に組み合わせるのではなく,高いレベルで調和させること。この調和を実現するための作業こそ,水野が開発チームの一人ひとりに期待した能力である。

 そして,そのために水野が導入したのが,車両全体の主要な200カ所以上の部位の挙動を計測できる,イタリアのマニエッティ・マレリ社のシステムだった。このシステムにより,開発中のクルマの実力を「見える化」できる。

 ただし,それだけではない。水野が決めた目標を定量化して示せるようになる。さらに,その目標の達成に向けて,チームのメンバーが考える基礎を築くためのツールにもなり得るのだ。

サーキットを渡り歩く

人づくりの期間中は,CV35型「スカイラインクーペ」ベースの車両を使い,トランスアクスル方式を少しずつ熟成させていった。
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 まずは,人づくり。とはいえ,開発を全く進めないというわけにもいかない。しかも今回は,エンジンを車両前方に,変速機を車両後方に置く「トランスアクスル方式」を採用するなど,技術的な課題が山積みだ。そこで,トランスアクスル方式を熟成させながら,その過程で人づくりを並行して進めることになる。

 技術の熟成,そして人づくりの場として水野が特に重視したのは,ニュルブルクリンクなどのサーキットだ。

 サーキットという言葉は,高速走行を連想させる。確かに水野は,GT-Rを「マルチパフォーマンス・カー」と称し,その目標の一つとして「時速300kmでの走行中もドライバーが助手席に座っている人との会話を楽しめる」ことを掲げていた。しかし,単純に高速走行性能を強化するためだけにサーキットを開発や人づくりの舞台として選んだわけではない。

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