(前回から続く)

 再生可能エネルギーの大幅な導入に向けて,電力網や住宅を変革しようという気運が世界中で高まりつつある。日本でも鳩山由紀夫首相が,CO2排出量の削減目標として1990年比で25%という数値を掲げ,世界の先頭を走る決意を表明した。

 この目標をどう達成するのか。現実解の模索はこれから始まるが,住宅の変革に懸かる期待が大きい。日本政府は,2020年までに太陽電池を2800万 kW導入すると目標を立てており,その大半を住宅に設置する計画だ。今回のCEATECでも,多くのメーカーが太陽電池などの再生可能エネルギーを,住宅内で効率的に活用する試みやアイデアを披露した(図1)。

図1 住宅の「エネルギー自給自足時代」に向けて<br>太陽電池などの分散電源や蓄電池,電気自動車,直流給電システムなどを制御して,住宅のエネルギーを賄う技術が出そろい始めた。
図1 住宅の「エネルギー自給自足時代」に向けて
太陽電池などの分散電源や蓄電池,電気自動車,直流給電システムなどを制御して,住宅のエネルギーを賄う技術が出そろい始めた。
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汎用品を束ねた蓄電池

 太陽電池などを住宅内で有効利用するには,蓄電池が欠かせないとみられている。不安定な出力の平準化や,余剰電力の蓄電のためである。住宅に必要な蓄電池の容量には諸説あるが,家庭で使う1日の電力量が10数kWh程度であることから,少なくとも数kWhは必要とみられている。これほどの容量の電池を導入するとなれば,電池の種類にもよるが最低でも数十万円は掛かる。

 今回,この住宅向け蓄電池を安価にするため,パソコン向けの汎用品を使う試みや,電気自動車の蓄電池を住宅向けとして使うアイデアが示された。

 例えばパナソニックは,ノート・パソコンの円筒型セルを140本使ったLiイオン2次電池モジュールを試作した(図2)。大量生産に対応したノート・パソコン向けの既存設備を利用でき,「車載用途に特化したセルを使う場合と比較して,コストを半減できる」(パナソニック)という。

 同社の2次電池モジュールは,「18650」と呼ばれる直径18mm×高さ65mmの円筒型セルを20並列×7直列で配置した。モジュールの電圧は 25.2Vで,容量は約1.5kWhである。セルの安全性を高めるため,絶縁層となるアルミナ層「HRL(heat resistance layer)」を電極の極板表面に形成している。展示会場では,この電池モジュールを6個使う約9kWhの家庭用ユニットを見せた。

図2 定置用Liイオン2次電池が続々
図2 定置用Liイオン2次電池が続々
住宅内の電力に直流を使う「直流ハウス」に向けた定置用Liイオン2次電池の出展が相次いだ。パナソニックは,市販の円筒型セルを流用した(a)。シャープは,同社が出資する電池ベンチャーであるエリーパワーのLiイオン2次電池ユニットを展示した(b)。TDKは,自社開発のラミネート型セルを用いた(c)。

 一方,電動車両の蓄電池を住宅向けに活用して安価にしようというアイデア,いわゆる「V2H(vehicle to home)」と呼ばれる考えの重要性を講演で示したのが日産自動車である。